ベンチからの眺め

@MIN-GYU_No3

ベンチからの眺め

自分が下手なのか、それとも他の理由があるのか、どちらにせよしょうがない。


それが勝負の世界なのだろう。求められるのは結果だけ。 そう自分に言い聞かせていたが、自分がいつもベンチで考えているプレーを体現したい。でも、試 合に出て活躍できる自信はあるかと聞かれると、答えはノーだ。


葛藤と闘っていると、気がつけばサッカーグラウンドに到着していた。送迎してくれた母にありがとうと言い、チームメイトとアップをこなしていく。


アップが終わると、その試合のスタメンの発表の時間がやってきた。


監督が淡々とスタメンの選手の名前とポジションを読み上げていく。


「右ウイング、佐藤。トップ下、中村。」 左ウィング。自分の得意とするポジションでもあり、選手間でも争いが激しいポジションだ。 今日の試合の左ウイングは誰かな。そんなことを考えていると、


自分の名前が呼ばれた。 驚きのあまり返事が遅れてしまった。


いつもベンチから試合を眺めているときは、 「こんなプレーをしてみたいな。ゴールを決めることは難しいかもしれないが、少なくともこんな ゴールを決めてみたいな。」と思っていた。


しかし、今の自分の思いは違った。 絶対に、このチャンスを逃さない。 いままで自分を試合に出さなかったことを後悔するまで頑張ってみせる。


自分が今までやってきたことが思い返される。 小学校3年生のときから始めた朝練習やランニング。 5時に起きてやったリフティング。 今までの3年間の結果をここで出すんだ。絶対に。


ピッチの風景は、ベンチから見る風景よりもはるかに広く、胸が高鳴るものだった。 ギラギラと太陽が照っている中、試合開始のホイッスルの音が聞こえてくる。 一呼吸置いて、走り出す。 これが、今の自分だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ベンチからの眺め @MIN-GYU_No3

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ