第19話 暴かれる真実
倉庫内の空気は冷たく、雨の音が遮られたその静けさの中で、緊張感だけが支配していた。香織の指が「送信」ボタンに触れる寸前で止まっていた。背後から響いた銃声と涼介の叫び声が、状況を一気に揺さぶった。
「香織、伏せろ!」
涼介が叫びながら香織に覆いかぶさるようにして地面に押し倒した。その瞬間、香織の手元から端末が滑り落ち、コンクリートの地面に叩きつけられる音が響いた。
「誰だ!」黒服の男が声を荒げ、銃を構えて周囲を見回す。
暗闇の中から一人の影が現れた。それは、倉庫の隅に隠れていたもう一人の黒服の男だった。しかし、彼が構えている銃口は香織たちではなく、最初に命令を下していたリーダー格の男に向けられていた。
「どういうつもりだ?」リーダー格の男が冷たい目で問い詰めた。
「……これ以上、この計画に付き合うわけにはいかない。」影が静かに答えた。その声には、どこか迷いと怒りが混じっていた。
香織はそのやり取りを見ながら、地面に落ちた端末を素早く拾い上げ、再び画面を確認した。「送信しますか?」の文字はまだ表示されたままだった。
「涼介、今のうちに……」香織が小声で囁いた。
しかし、涼介はまだリーダー格の男と影の男の動きを警戒していた。「待て。こっちに気づかれる可能性がある。」
「お前、俺たちを裏切るつもりか?」リーダー格の男が静かに問いかけた。その声には怒りを抑え込んだ冷たさがあった。
「裏切るつもりはなかった。」影の男が銃を下げずに答えた。「でも、この計画が人々の命を犠牲にしていることを知った以上、これ以上見過ごすことはできない。」
「ふざけるな!」リーダー格の男が銃口を向けた瞬間、影の男が先に引き金を引いた。銃声が倉庫内に響き、リーダー格の男は肩を押さえながら倒れ込んだ。
「……これで少しは時間を稼げる。」影の男が振り返り、香織たちに向けて言った。「今のうちに逃げろ。データを守るんだ。」
香織はその言葉に一瞬驚いたが、すぐに端末を握りしめ、涼介に向かって言った。「涼介、署長、行きましょう!」
「でも……」涼介が躊躇するように言ったが、署長が彼の肩を叩いた。「今は彼の言葉を信じるしかない。動け!」
香織たちは倉庫の裏手にある小さな出口へ向かって駆け出した。雨が再び彼らを包み込み、外の冷たい空気が肌に刺さるようだった。暗闇の中で、香織はバッグを胸に抱えながら振り返り、倉庫の中に残された影の男の姿を思い出していた。
「彼の行動は裏切りじゃない……彼は正しいことをしたのよ。」香織が静かに呟いた。
「だとしても、ここから脱出しないと全てが無駄になる。」署長が周囲を警戒しながら言った。「データを守るんだ。真実を公にするためにな。」
涼介が前を見据えながら息を整えた。「次の場所は決めてるのか?」
香織は端末を見つめながら答えた。「このデータはネットワークに繋がった瞬間に公開される。でも、今は確実に送信できる安全な場所を見つけなきゃいけない。」
しかし、彼らが数メートル進んだその時、背後から再び複数の足音が聞こえてきた。振り返ると、新たな黒服の男たちが倉庫から出てきてこちらに向かって走ってきている。
「奴ら、まだ追ってくる!」涼介が叫ぶ。
署長が銃を構えながら冷静に指示を出した。「先に行け!俺が時間を稼ぐ!」
「ダメです、署長!」香織が止めようとしたが、署長の目は決意に満ちていた。
「これが俺の役目だ。君たちは真実を届けるんだ!」
香織は涙を堪えながら、涼介と共にその場を後にした。署長の背中が、雨の中で小さくなっていく。
香織と涼介は雨の中を走り続けた。周囲は完全に暗闇に包まれており、街の明かりは遠く、二人の行く手を遮るものは何も見えなかった。
「香織、次はどうする?」涼介が息を切らしながら尋ねる。
香織は端末を握りしめたまま言った。「もう一度考える必要がある。このデータを送信する場所とタイミングを。」
しかし、その時、遠くの暗闇から新たなヘッドライトの光が見えた。それは静かに二人に向かって近づいてくる車だった。
「また敵か?」涼介が警戒しながら身構えた。
「違う……でも、気を抜かないで。」香織が低く答えた。
車が二人の前で止まり、中から一人の人物が降りてきた。その顔を見た瞬間、香織は驚きの声を上げた。
「あなたは……!」
読者選択肢
1.降りてきた人物を信用し、車に乗って逃げる
- 降りてきた人物が味方か敵か分からないが、その申し出を受けて協力する。ただし、罠の可能性がある。
2.その人物を信用せず、自力で安全な場所を探す
- 降りてきた人物を信用せず、自分たちだけで行動を続ける。ただし、追跡者から逃れる難易度が高まる。
応援コメントへの選択番号記載依頼
読者の皆様、いよいよ物語の緊張感は最高潮に達しています!
香織たちが持つ真実のデータ。その運命を決定する重要な場面が訪れました。この人物を信用するか、それとも慎重に自力で進むか――どちらが正しい選択か、あなたの知恵が必要です。
コメント欄に「1」または「2」の番号を書いてください!
締切:明日朝7時まで
香織たちの未来を、あなたの選択で導いてください!
三田村香織から読者メッセージ
読者の皆様、いつも応援してくださりありがとうございます!
この物語もいよいよ佳境に差し掛かり、私たちはまたしても新たな選択を迫られています。真実を届けるためには、皆さんの力が必要です。
どうか、あなたの選択で私たちを導いてください。次回も一緒に物語を紡いでいきましょう!
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