第16話 暗号の罠

激しい雨が屋根を叩きつける音が、倉庫の中の緊迫感をさらに高めていた。香織の視線は、目の前に突きつけられた暗号の画面に釘付けになっていた。黒服の男が見せているその端末には、複雑に入り組んだ文字列と、いくつかの手書きのメモが映し出されている。暗号文の背景には、山崎の名前と日付が記されており、メモには意味深な数字と短い単語が並んでいた。


「どうだ、見覚えがあるだろう?」

男の声は冷たく、どこか挑発的だった。


香織は冷静を装いながら口を開いた。「この暗号を解けるのは、私だけだと本当に思っているんですか?」


黒服の男は薄く笑い、香織に一歩近づく。「山崎の研究を理解していたのは君だけだ。彼がこのデータを守るために何を仕掛けたのか……それを解くカギも君に託されていると考えるのが自然だ。」


香織は視線を落とし、わざとため息をついたように見せた。「簡単に解けると思わないで。山崎さんがどれだけ慎重な人だったか、あなたたちは本当に理解しているの?」


「言い訳はいい。」男は声を鋭くした。「解け。今すぐだ。」


涼介が香織の隣で眉をひそめ、低く囁いた。「香織、本当に解くのか?奴らが信じられるわけない。」


香織はわずかに頷き、低い声で返した。「わかってる。でも、時間を稼ぐしかない。」


香織は慎重に端末を受け取り、画面に表示された暗号文を指先でなぞるように見つめた。そこには、いくつかの異なる層の暗号が仕掛けられていることにすぐ気づいた。最初の層は単純な文字列の並びだったが、その奥には複雑な数列や、山崎が残した特殊なパターンが隠されている。


「この暗号、3段階の構造になっている……。」香織は呟いた。


「3段階?」涼介が首を傾げる。


「最初の層はダミー。次の層で実際の情報にアクセスする仕組みになっている。ただし、そこにもトラップが仕掛けられているわ。」


「トラップ?」黒服の男が疑わしそうに聞き返す。


香織は端末から目を離さずに答えた。「例えば、途中で間違ったパスを入力すれば、データそのものが完全に破壊される。山崎さんはそういう人だった。」


「面倒な仕掛けだな。」男は苛立ちを隠さずに言った。「だが、お前なら解けるはずだ。」


香織は目を細め、暗号文をじっと見つめた。その文字列の中に、山崎が頻繁に使っていたキーワードのパターンがいくつも見え隠れしている。「彼が使うはずの暗号パターン……“Fibonacci sequence”……。」


「何だそれ?」涼介が横で聞き返す。


「フィボナッチ数列よ。山崎さんがよく研究の中で使っていた暗号化手法。」香織は答えた。「この数列を鍵にして、次の層に進むためのコードを割り出すことができる。でも、もし途中でミスをすれば……」


「データは消える。」署長が続けて言った。「そして、俺たちの命も終わる可能性が高い。」


香織はゆっくりと頷いた。「その通り。」


香織はフィボナッチ数列を基に最初のコードを入力した。その瞬間、端末の画面が一変し、新たな暗号文が現れた。今度は複雑な数式が画面を埋め尽くしている。


「次の段階ね……。」香織は額の汗を拭いながら呟いた。「この数式を解けば、最終段階に進める。」


「急げ。」男が鋭く命じる。


「焦らせないで。」香織は冷静に答えた。「間違えばデータは全て失われるのだから。」


彼女は数式をじっくりと見つめ、頭の中で一つずつ計算を進めた。その間にも、雨音と黒服の男たちの不穏な気配が彼女の神経を苛んでいく。


「涼介、時間を稼ぐ必要があるかもしれない。」香織が低い声で囁いた。


涼介は頷き、小さな声で返した。「何か策はあるのか?」


「まだよ。でも、最終段階に進んだら、こちらが逆転する可能性がある。」香織の目は真剣だった。


最後の層:真実を守るために


最終段階に進むと、端末の画面には一つの質問が表示された。


「このデータを開く覚悟はあるか?」


香織は驚いた。山崎がここまで慎重に仕掛けを施していたとは思わなかった。


「何だ?」男が画面を覗き込み、苛立った声を上げた。「覚悟って、どういう意味だ?」


「山崎さんは、ここで私たちに選択を迫っているのよ。」香織は静かに答えた。「このデータを開けば、全ての真実が明らかになる。でも、その代償が何なのかは、ここでは分からない。」


「ふざけるな!」男が銃口を香織に向けた。「選択の余地はない!開け!」


涼介がすぐに間に入り、声を荒げた。「落ち着けよ!もしデータが消えたら、お前らの計画も台無しだろ!」


署長も銃を構え、男たちを牽制する。「彼女に決断を急がせるな。彼女が選択を誤れば、君たちも全てを失うことになる。」


香織は画面を見つめ、深く息を吸った。山崎が遺したこの仕掛けが、ただの防御策ではないことを彼女は理解していた。この先にあるのは、単なる真実ではなく、それを公にする覚悟と代償を伴う何かだ。


読者選択肢

1.暗号を解読し、データを完全に開く覚悟を決める

 - 山崎の遺した真実を明らかにする。ただし、その代償が何なのかは不明で、リスクが高い。

2.解読を中断し、敵を欺きながら別の策を模索する

 - データを守りつつ、敵を欺き逃走を図る。ただし、真実を明らかにする機会が遠のく可能性がある。


応援コメントへの選択番号記載依頼


読者の皆様、物語はいよいよ核心に迫っています!

香織たちは山崎の遺したデータを前に、真実を暴くか、それとも守り抜くかという究極の選択を迫られています。この選択が物語の結末を大きく左右します。あなたの推薦力で、彼らを導いてください!


コメント欄に「1」または「2」の番号を書いてください!

締切:明日朝7時まで

香織たちの運命は、あなたの選択にかかっています。一緒に真実を掴み取りましょう!


三田村香織から読者メッセージ


読者の皆様、いつも応援していただきありがとうございます。

私たちは今、山崎さんが遺した暗号の前で最大の決断を迫られています。この選択が、真実を明らかにする鍵となるでしょう。


どうか、あなたの知恵と力を貸してください。一緒に真実を掴み取り、この物語を完成させましょう。次回もお楽しみに!

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