第9話 署長の真意
古びた警察署の一室。蛍光灯の明かりがわずかにちらつき、薄暗い壁には無機質な影を落としていた。狭い空間に充満する静けさは、妙な緊張感を生み出していた。
署長の登場で、部屋の雰囲気は一変した。彼の落ち着いた物腰とは裏腹に、その鋭い眼差しが香織と涼介の内心を見透かそうとしているようだった。
「さあ、君たち。」署長が口を開く。「私は状況を把握したい。ここで起きていることの真相を聞かせてくれ。」
香織はバッグを強く抱えながら、署長をまっすぐ見据えた。「私たちは真実を明らかにしようとしているだけです。そのために命を狙われています。そして、このデータがその真実を示すものです。」
署長は小さく頷いた。「つまり、君たちの持っているデータが重要だということだな。それを渡せと言われたら、どうするつもりだ?」
香織の眉がわずかに動いた。「申し訳ありませんが、現時点で署長を信用する理由がありません。このデータが隠蔽される可能性を考えると、軽々しく渡すことはできません。」
署長は少し驚いたように目を細めた。「慎重な判断だ。しかし、私が敵ではないとどう証明すればいい?」
涼介がそこで割り込む。「そっちが味方だって証明できない以上、俺たちも慎重になるしかないんだよ。」
署長は軽くため息をつき、椅子に深く腰掛けた。「確かに、私が君たちの敵でない保証はどこにもない。それは認めよう。しかし、この警察署にいる以上、君たちが今後も自由に動けるとは限らない。私がそのデータを預からないと、さらに面倒な事態になる可能性が高い。」
「預かるって言っても、それが本当に守られる保証があるんですか?」香織の声には鋭さがあった。
署長は冷静に頷いた。「保証はない。しかし、私にはこれを守る理由がある。君たちのような人間を犠牲にしないためにな。」
その言葉に香織の視線が揺れた。「どういう意味ですか?」
署長はデスクの上に手を組み、少し間を置いてから話し始めた。「数年前、この署でも似たような告発があった。しかし、その告発者は証拠を持ち出す前に命を落とした。そして、その証拠も結局、何者かの手によって隠蔽されてしまった。」
「じゃあ、あなたも何もできなかったってことですか?」涼介が挑発するように言った。
「そうだ。」署長は静かに答えた。「だが、今回は違う。私は君たちを守り、このデータを真実として世間に届ける方法を模索するつもりだ。」
「その言葉を信じろって言うんですか?」香織は眉をひそめたまま聞いた。
署長は力強く頷いた。「君たちには選択肢がある。このデータを守るために、孤独な戦いを続けるか、それとも私たちと協力して解決を目指すか。どちらを選ぶかは君たち次第だ。」
その時、窓の外でわずかな音がした。署内に届く雨粒の音。ポツ、ポツと窓ガラスに当たり、やがて勢いを増していく。雨は急激に激しさを増し、夜の闇をさらに深く染めていく。
香織は窓の外の雨を一瞥しながら、ふとバッグを抱え直した。緊張と不安が混じるこの空間の中で、彼女の胸には冷静な決断が求められていた。
「涼介。」香織が低い声で話しかける。
「どうした?」彼は警戒を解かないまま耳を傾ける。
「署長を信じるべきかどうか……それを決めるのは私たちよ。」香織の声は冷静だったが、その瞳には迷いが垣間見えた。
「俺はどっちでもお前に従う。でも、間違えたらマズいぞ。」涼介がバッグを見つめながら答えた。
香織はバッグを握る手に力を込め、署長の顔をまっすぐ見た。
「わかりました。信じるかどうか、今ここで判断します。」
署長が机に手を置き、静かに口を開いた。
「では、君たちの決断を聞かせてもらおう。私はここで君たちを裏切らないと約束する。」
しかし、その言葉が終わる前に、廊下から大きな声と足音が聞こえてきた。
「非常事態だ!署内に不審者が侵入した!」
署長は目を見開き、すぐに立ち上がった。「どういうことだ?」
廊下の騒ぎが一層激しくなり、何かが倒れる音が響く。署長は部屋のドアを急いで閉じ、鍵をかけた。
「ここにいる間は安全だ。」彼は香織たちに向き直った。「決断を急げ。時間がない。」
香織と涼介は顔を見合わせ、静まり返った部屋の中で互いの意志を探るように視線を交わした。
読者選択肢
1.署長を信じて協力し、データを渡す
- 署長の言葉を信じ、データを託して警察の力を借りる。ただし、署内の混乱が不安材料となる。
2.署長を信用せず、データを持ったまま逃げる準備をする
- 署長を信じず、自らの手で真実を守るために署内から脱出する。ただし、不審者に遭遇するリスクが高まる。
応援コメントへの選択番号記載依頼
読者の皆様、ついに物語はクライマックスに近づいています!
香織と涼介が守るデータを巡る状況が一層緊迫しています。署長を信じるべきか、逃げるべきか――どちらの選択が彼らの未来を切り開くのでしょうか?
コメント欄に「1」または「2」の番号を書いてください!
締切:明日朝7時まで
物語の鍵を握るこの選択を、ぜひ皆様の手で導いてください。
三田村香織から読者メッセージ
読者の皆様、私たちの物語をここまで応援していただき、本当にありがとうございます!
私たちは今、これまでで最も重大な決断を迫られています。このデータを守ることが、真実を明らかにする唯一の道です。しかし、どのように行動するかで未来は大きく変わるでしょう。
どうか、あなたの選択で私たちを導いてください。次回、皆様の決断が新たな展開を生み出します。引き続き応援をよろしくお願いいたします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます