第10話、メイド鑑定(サーチ)
「私っ、復活っ」
今私はギルドにいる。
エリザベスから、レイカがショタ男爵と一緒に領地に帰ったと聞いたからだ。
結局、一カ月近く引きこもってしまった。
「はあ、どこかに良質なご主人様が生えていないかしら」
古式ゆかしいメイド服。
ひっつめ髪。
物憂げに頬に手を当てた。
「……久々にギルドに来て、最初に言うことがそれ?」
ギルドのカウンター越しにエリザベスが声をかけてきた。
「マンドラゴラみたいに抜くと絶叫するの」
クスクス
闇落ちした目で笑う。
「やれやれ、ちょっとリハビリが必要ね」
「はいこれ」
「?、なに」
「薬草採集の仕事」
「あんたほとんど部屋から出てなかったんでしょ」
「森の空気でも吸ってきなさい」
「うっ」
――まだ街の外に出るのは怖い
「そろそろ、仕事しないとランクが下がるわよ」
「……行ってきます」
薬草採集の依頼書を受け取った。
「日の光が眩しいわ」
街の近くの森に来ていた。
色々な薬草をギルドが定期的に植えているのが特徴だ。
採取にはギルドの許可がいる。
無い場合は密猟になる。
ガサゴソ
「おや、ルリ嬢ちゃんじゃないか」
茂みの中から小柄な人物が現れた。
「ヤク爺さん、お久しぶりね」
白いひげを蓄えた小柄な爺さんだ。
最低ランクの冒険者でもある。
しかし、この森で薬草を採取し続けて、40年。
確か、ギルドにこの森の薬草の管理を任されているはずだ。
「はいこれ」
薬草採取の依頼書を見せる。
――ふふ、薬草採取の達人、いえ仙人と言われているわね
「百八あるメイド
草の上に矢印と共に鑑定結果が浮き出る。
薬草、品質ランクS×10
毒消し草、品質ランクA×5
麻痺草、品質ランクS×1
鑑定の結果を見ながら採取した。
フッフ――ン
「どお」
ヤク爺さんにどや顔で見せた。
「ほっほっほっ、ルリ嬢ちゃんも大きくなったのお」
「この街に来たときはこれくらいだったのに」
自分の背と同じ高さで手を横に振る。
「どれ、見せてやろうかの」
ガサリ
手前の茂みに無造作に手を入れる。
「これじゃ」
「えっ」
氷原華草、品質ランクSS
――これって、遥か北の、”氷竜雪原”でアイスドラゴンが守っているやつでは
「もうひとつ」
ザクッ
無造作に土を掘る。
「うっ」
冬虫夏草、品質ランクSSS
――冬に虫、夏に草に変態する超危険な魔物、エリクサーの材料になる
「ここじゃの」
ヒョイッ
木の幹に手を伸ばす。
「ひいっ」
竜殺火炎茸、品質ランクSS
「あああ、危ないいい」
チョっとした振動や刺激で大爆発。
半径10キロ四方が火の海だ。
ほっ、ほっ、ほっ
ヤク爺さんが、超危険なキノコを手でもてあそびながら笑った。
「ちょっといい気になりましたあ、ごめんなさあい」
ヤク爺さんにドッゲーザして謝った。
ギルドに帰る。
「はい、薬草採集、無事終了よ」
「で、元気出た?」
「森でヤク爺さんと会った」
「ひどい目にあった」
かくかくしかじかと説明する。
「あっはっは、ルリ、今日の夕飯おごるわよ」
エリザベスが笑う。
「ふふっ」
釣られて私も笑った。
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