第34話
ラックとは別に親しい仲って訳じゃなかった。ただの同期・・・まあ他の人もだいたいそんな感じだけど
それでも僕はラックの為に・・・ネルちゃんの為に何かしてあげたかった
だって・・・ネルちゃんの病気はネルちゃんのせいじゃないし、ましてやラックのせいじゃない。病気じゃなければ他の子と同じように外に出て遊んだり自分の進む道を決めたり出来たはずなのに・・・不公平だ
なら偶然に得た僕の力でネルちゃんを助けても良いじゃないか・・・それくらい許して欲しい・・・ダンジョンでは不平等かもしれないけど・・・ダンジョンの外を含めたら・・・
いつも通り門番をしながらダンジョンを観察する
今日は特に1階を重点的に見ていると・・・昨日の今日と言うのにラックはダンジョンに現れた・・・ソロで
初めてのダンジョンだから当然ゲートは使えないから1階からだ。確かラックの適性は・・・スカウト
でもバーセル先生は確か言ってた・・・将来的にはレンジャーにもなれるって
かなり努力したみたい・・・低階層なら十分アタッカーで通用するくらい実力をつけていた
凄まじい速さで魔物を倒し先に進むラック
普段は魔物が倒されたら微妙な気持ちになるけど・・・今日だけはラックだけを応援した
ダンジョンマスターとしては平等でなくてはならないけど・・・ラックにだけは・・・いいだろ?
「ロウ坊~ボサッとしてないで仕事せえ」
「は、はい!」
この分だと今日一日でかなり下まで行けそう・・・もしかしたら踏破しちゃうかも・・・でも宝箱がある部屋とかも無視してなんであそこまで必死になって下に行こうとしているんだ?
そっか・・・ダンジョンは下に行けば行くほど魔物は強くなる・・・強い魔物からはより大きな魔核が出る。それに宝の価値も下の方が上がるし・・・まあ、そうなるように作ってんだけど・・・稼ぐなら当然下を目指すか
僕のダンジョンは各階にゲートがあるから1回でも下まで行ってしまえば稼ぎもグッと楽になる・・・多分ラックはそう考えて初日から飛ばしてるんだな
「ロウ坊~」
「はい!すみません!」
大丈夫・・・きっと大丈夫だ
僕は仕事をしながらもラックの姿を追い続けた
「今日は全然集中してなかったようじゃが・・・明日はしっかりと・・・」
「ごめんなさい!ヘクト爺さん・・・明日僕休みます!」
「お、おい!ロウ坊!」
すごい!もう7階まで・・・パーティーだとサラさん達があっという間に6階まで行ったけど、ソロでこんなに早く7階に到達するなんて・・・
まだ戻る気はないみたい・・・8階まで行こうとしてるのかな?ゲート部屋を覗いてたみたいだからこのダンジョンが8階まであるって知ってるはずだからその可能性はあるな
《ロウ!》
門番の仕事も終わり、早く司令室に行こうと走っていると突然ダンコが僕の名を呼ぶ
道端で返事をする訳にも行かずにとりあえず物陰に隠れて・・・
「どうした?」
《・・・あの人間・・・手を出した・・・》
「??・・・手を出した?あの人間って・・・ラック?」
《そうよ!》
「何に手を出したの?別に宝箱にトラップとか仕掛けてないし別に・・・」
《・・・『徘徊するもの』・・・》
徘徊・・・え?
「まさかリザートマン!?」
思わず大声を上げた後で慌てて自分の口を塞ぐ
幸いにも誰にも気付かれてない・・・けど・・・
「なんでそんな無茶を・・・アレに勝てるのなんて・・・」
現状だとサラさんが居るパーティーくらい・・・ソロ・・・しかもEランクのラックじゃ自殺行為だ!
《知らないわよ・・・あ、もう
「なっ・・・」
頭に血が上る
僕はゲートを開くと直接7階へと足を踏み入れた
ダンコが頭の中でがなり立てるが関係ない・・・今はラックの元に少しでも早く行く事に集中する
7階に着いて辺りを見回しても居ない・・・徘徊するものは7階のどこにでも現れるから場所が特定出来・・・そうか、見ればいいんだ
少し落ち着きを取り戻し目を閉じ、7階で人が居る場所を探すと中間地点くらいの場所に人がいる事が分かった
すぐにゲートを開いてその場所へと向かうと・・・
「ラック!!!」
地面に倒れるラックに対して槍を突き刺すリザートマンの姿が目に飛び込んで来た
ラックの名を叫びながら駆け寄るがリザートマンは僕を無視して更にもう一突き・・・その姿を見て僕は剣へと手を伸ばす
《やめなさい!!ロウニール!!》
多分ずっと僕に話し続けていたのだろう・・・やっと僕の耳にダンコの声が届き僕は少しだけ冷静さを取り戻し立ち止まる
「・・・どっか行け・・・」
剣に伸ばした手を戻し、ゆっくりと息を吐くとリザートマンに命令した
するとリザートマンは振り上げた槍を戻すと奥の闇へと消えて行く・・・滴る血の跡を残しながら・・・
リザートマンが視界から消えたのを確認すると倒れて動かないラックに駆け寄り抱き起こす
「ラック!ラック!!目を開けろ・・・ラック!!」
傷が・・・血が・・・近くで見ると明らかに致命傷・・・このままでは・・・そうだ・・・回復魔法・・・まだそんなに回復力はなくても傷口を塞げば・・・
「ロウ・・・ニール?」
「ラック!今回復するから・・・」
「これを・・・俺ん家に・・・」
ラックは回復しようとして出した僕の手を掴むと反対の手で袋を取り出した
何かが入った袋・・・多分このダンジョンで得た・・・魔核・・・
「時間が・・・ないんだ・・・もっと・・・」
「じ、自分で届けてよ!すぐに良くなるからさ・・・自分で・・・」
「たの・・・む・・・」
僕の手を掴んでいた手がスルリと落ちる
僕はすぐに回復魔法を唱えた
何度も・・・何度も・・・
《・・・ロウ・・・もう死んでるわ・・・》
「うるさい!まだ死んでない!ラックは・・・ラックはまだ・・・」
《その人間が望んだ結果よ》
望んだ・・・結果だと?
「ふざけるな・・・ふざけるなよ!ダンコ!!これが・・・これのどこが望んだ結果だ!!」
剣を抜き自分の胸に押し当てる
剣先には胸からせり出した石・・・ダンコがあった
《やるならやりなさい。アナタの望む結果がそうなら否定しないわ》
「・・・いや・・・そんなつもりじゃ・・・」
《・・・その人間はなぜリザートマンと戦ったと思う?その人間はね・・・リザートマンを殺して体内にある魔核を取り出そうとしたの・・・命を懸けてね。結果リザートマンが勝った・・・ただそれだけ。それを否定するのならダンジョンをも否定する事になる・・・ダンジョンは常に平等・・・それ自体を否定するのなら・・・私を否定するのと同じ・・・だから・・・》
『ダンジョンは常に平等』・・・か
忘れてた・・・ラックはダンコの言う通り魔核を得ようとして失敗しただけ・・・決して無理強いなんてしていない・・・自ら挑み、結果こうなっただけ・・・
「・・・ごめん・・・」
剣を下ろし鞘に納めようとするがなかなか入らない。手が震え遂には剣を落としてしまった
「・・・ごめん・・・」
もう一度謝る
今度はダンコにではなく・・・目の前で横たわるラックに対して
ダンジョンを作ってから何でも出来るような万能感を感じていた。でも、とんでもない・・・
僕は・・・無力だ──────
しばらくラックの前で呆然と立ち尽くした後、僕は床に落ちていた袋を拾い司令室へのゲートを開く
そして司令室で仮面とマントを付けると夜になった村へとゲートを繋げた
繋げた先は居住区という事もあり、人気はなく静まり返っている。僕の足音だけが響く中、目的の場所に着くと深く息を吐き玄関を叩いた
返事はない
留守かと思い出直そうと踵を返した瞬間に玄関のドアが少しだけ開いた
「・・・誰だ?・・・ラックか?」
「・・・すみません・・・夜分遅くに・・・」
「誰だと聞いている・・・こんな時に・・・何の用だ?」
「・・・その・・・ラックから・・・」
「ラック?ラックがどうした?」
ラックの名を出した途端、ドアは大きく開かれラックの父親と思わしき人物が顔を覗かせる。どこか様子がおかしいと感じながらも僕はラックから託された袋を無言で差し出した
「?なんだ?・・・!?・・・仮面??・・・なんなんだ君は!」
袋を見て首を傾げ、僕の仮面を見て怒り出す
それでも僕は仮面を取れない・・・取ることが・・・出来ない・・・
「ふざけてんのか!何者だ!」
胸ぐらを掴まれ今にも殴られそうになるが言葉が出ない
何と言えばいいのか・・・分からない・・・
「アナタ・・・何を・・・!?・・・その袋・・・ラックの・・・」
「ラックの?・・・この袋が?・・・おいあんた!ラックの知り合いか?なら・・・なら伝えてくれ・・・」
ラックの母親が出て来て袋を見てひと目でラックの物と分かると急に父親が態度を変える。酷く焦っていて・・・今にも泣きそうな顔をして・・・
「もう・・・無理しなくていいって・・・今朝・・・お前が出て行った後に・・・」
嘘だ・・・そんなの・・・あんまりだ・・・
「もういいんだ・・・無理して稼がなくても・・・そう伝えてくれ・・・頼む・・・どうか・・・」
違う・・・そんな訳ない・・・だってラックは・・・あんなに・・・
そこからの記憶がない
ただ気付いたらダンジョンの司令室にいた
ただただ・・・司令室に・・・いたんだ──────
「なに?ダンジョンの捜索願だと?」
「はい・・・その冒険者はEランクのラック・シートスさんで・・・」
「明日朝一で依頼しとくと伝えろ・・・さすがにこの時間からじゃだれも動かんだろ」
「それが・・・ラックさんのギルドカードを見たら・・・」
「・・・くそっ!・・・依頼者は?」
「御両親だそうで・・・」
「・・・すぐに依頼をかけると伝えて帰ってもらえ・・・出来る限りの事はすると・・・それと・・・」
「はい、分かっております」
「・・・そうか・・・昼間じゃなくて良かったかもな・・・新人にはまだキツ過ぎる・・・」
「ギルド長と一緒にこの村に来ましたが・・・私でも・・・」
「そう・・・だな・・・すまねえ。ハア・・・いつになっても慣れねえな・・・これだけは──────」
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