第32話

「ギルド長!何故ここに!?」


ギルドの長がダンジョンに入るなど聞いたこともない。もしかしてケン達が事前に・・・そう思ってみんなを見るが全員が知らないと首を振る


「虫の知らせってやつだ・・・まあいいじゃねえか細けえ事は・・・それよりも派手にやってくれたみたいだな・・・ええ?ハズン・モーシス」


なぜここに来たのかいまいち分からないが・・・これ以上にないタイミング!


ハズンの持つ血糊のついた剣、その前にある首なしの死体・・・誰がどう見ても犯人はハズンだ。言い逃れは出来まい


「ギルド長・・・だと?・・・なぜ・・・」


「俺がここに居る理由なんてどうでもいいだろ?全員この場から動くな・・・もうすぐ兵士がやって来る。大人しくお縄になれ」


「くっ!」


「ったく・・・好き放題やりやがって・・・ん?ほらお前ら行くぞ!それともお前らもグルなのか?」


「いや違います!行きます行きます!」


慌ててフリップについて行くケン達。私も部屋を出ようとすると・・・


「このままで済むと思うなよ・・・風鳴りぃ・・・」


「そこの首なし死体と同じ事を言うんだな・・・ハズン」


「くっ!このっ・・・」


ハズンは何か言おうとしていたがフリップが振り返り睨みつけると黙り込む



こうして私達は何とか窮地を脱する事が出来た・・・何故ギルドに居るはずのフリップがダンジョンに・・・しかも事情を察しているのか不明なまま・・・



ギルドに戻ると私達はフリップの部屋へと案内された


そこで衝撃の光景を目の辺りにする


「これは・・・」


「風通しが良くなったろ?」


風通しが良くなったって・・・窓が割れ、部屋の中には割れた窓ガラスの破片が散乱していた。室内に破片があるって事は・・・外から割られた?


「ギルド長・・・何があったのです?」


「なーに、気になる事がいくつかあるだろ?それを今から順を追って説明する」


「その前に・・・アイツら相手にこの村にいる兵士だけでは・・・」


「いや、呼んでねえぞ?」


「呼んでない?」


「今の兵士達じゃ手に余るだろ?殺されて逃げられるのがオチだ」


「という事は・・・」


「ああ・・・バカじゃなきゃ逃げて二度とこの村には来ねえだろ・・・セルフ永久追放が奴らの罰だ」


わざと逃がしたと言う訳か。確かにそれが正解かも・・・


「助かりました・・・改めてお礼を。それで・・・お聞かせ願いますか?この部屋の惨状とギルド長が自らダンジョンに来て下さった経緯を」


「まっ、そんな複雑な話じゃねえんだが・・・密告があったんだよ・・・お前さん達が連中と揉めてるってな。で、その密告者はどこからやって来たかと言うと・・・」


そう言ってフリップは吹きさらしの窓から外を眺める・・・つまり・・・外から??


「びっくりしたぜ・・・いきなり窓が割れたと思ったら仮面を付けた野郎が・・・」


「え!?」


「ああ、そう言えばいつかの報告にあったな・・・確かサラは1回助けられてるんだっけか?その仮面野郎に・・・」


「え、ええ・・・同一人物かどうかは分かりかねますが・・・」


「仮面を付けてる野郎がそう何人も居るかってんだ・・・間違いなくサラを助けた野郎と同じ奴だろう・・・サラ?」


ああ・・・そんな・・・ローグ様・・・


「サラ姐さん大丈夫ッスか?」


「え、ええ・・・そ、それでロー・・・仮面のお方はなんと?」


「仮面の・・・お方?・・・ん、まあ入って来るなり『ダンジョンで冒険者が襲われている』って言うから当たり前だろって返したら・・・『冒険者に、でもか?』って・・・一瞬何言ってんのか理解出来なかったが、すぐにピンと来てな。サラと連中の事かと急いで部屋を出ようとしたらそいつなんて言ったと思う?『現場はダンジョン1階、2個目のY路地の手前の小部屋だ』って・・・」


「ウッ・・・」


「サラ姐さん!?」


「い、いや・・・なんでもない・・・そ、それで?」


「それで、も何もそこからはお前さん達知っての通り部屋の前の奴をぶっ飛ばして中に入ったらお前さん達が本当に居たって訳だ・・・って聞いてるか?サラ」


「も、もちろんです・・・すみません・・・」


ローグ様が・・・ローグ様がまた!どういう事!?私をずっと見守ってくれてたって事!?冷静に考えるのよ!・・・うふっ!って違う!喜んでる場合じゃないわ!なぜローグ様はギルド長であるフリップに伝えたのかしら?・・・そっか・・・ローグ様は全てお見通しで・・・ハズン達をパパッと皆殺しにするよりフリップに伝えて丸く収まるように・・・なんて・・・なんて判断力なの!


「あの・・・サラ姐さん?」


「!・・・何かしら?」


「か、かしら??」


ハッ!?なぜ私はそんな言葉遣いを・・・まさかとっくに捨てた女の部分が出て来てしまったとでもいうのか・・・恐るべしローグ様・・・



フリーの冒険者をしていると邪魔になる『女』


直接メンバーから付き合え、愛人になれ、ヤラせろと言われ、周りからは体を売ってパーティーメンバーとなったとか取り入ったとか囁かれ・・・私の実力など見はしなかった


まあこの服装もかなり露出度が高いしそう思われても仕方ないのかも知れないが・・・それでも『女』としてしか評価されないのは納得出来ず、パーティーメンバーと距離を置くようになりいつしか言葉遣いが変化した


その私の言葉遣いが戻るということは・・・私はやはり『女』としてローグ様を・・・求めてる・・・



「もしもーし・・・サラ姐さん?」


「・・・すまないケン・・・もう大丈夫だ。それでギルド長・・・仮面のお方はどこへ?」


「・・・ん?あ、ああ・・・俺もすぐに部屋を出ちまったからな・・・まあ来た時と同じように窓から出て行ったんだろうよ。もし言った場所で何もなかったら窓代は請求してやろうと考えてたが・・・今回は大目に見てやるから次からは普通に入って来いと伝えてくれ」


「伝える?」


「あん?知り合いじゃないのか?」


「いや・・・その・・・」


「てっきり俺は・・・そっか・・・正体不明の仮面の騎士、か」


「・・・騎士、ですか?」


「お前さんにとっては騎士だろ?2回も命を助けられて・・・それかお前さんのストーカーか・・・」


「スト・・・き、騎士です!騎士・・・私のナイトです!」


、か・・・はっ、すっかり乙女の顔しやがって・・・その顔の方がいいぜ?今までのおすまし顔よりずっと、な」


乙女と言われて顔が熱くなる・・・けど・・・悪い気はしなかった


仮面のお方改め仮面のナイト様・・・ローグ様は一体何者なの?


どうか姿を現して下さい・・・ローグ様・・・





「怒ってるのか?ダンコ」


《・・・言ったよね?関わらないで、って》


「関わってないだろ?・・・直接は」


《・・・》


司令室でいつもより口数の少ないダンコ・・・どうやら昼間の僕の行動が気に入らないらしい


奴らはサラさんをこの村から追い出そうとしていた。それを聞いた僕はいつもの腹痛を起こすと急いで現地に向かおうとしたが相手は僕より格上・・・サラさんと共闘すれば勝てるとは思ったけどいきなり僕が乱入して共に戦ってくれるか怪しいしダンコと関わらないって約束してたし・・・で、思い付いたのがギルド長に今起きてる事を伝えるって事だった


まさかギルド長本人が行くとは・・・てっきり他の冒険者を向かわせたりするものかと・・・まあ助かったからいっか


《ハア・・・いい?アナタの存在が知られれば知られるほど危険度が増すの。認識阻害効果も万能ではないわ・・・仮面が外れて見られれば終わりだし人間の中には阻害効果を破る者もいるかもしれない・・・アナタは正体を知った人間を殺す覚悟があるの?》


「・・・何も殺さなくても・・・」


《ロウ?バレたらどうなるか想像力が足りないんじゃなくて?》


「分かってるよ・・・殺されたり実験に使われたり・・・だろ?」


《そうよ。それにこれは言わなかったけど・・・もし人間がロウが魔物を創る事が出来ると知ったら何をするか想像出来る?》


「・・・うーん・・・」


《ハア・・・この大陸にはいくつかの国があるでしょ?そして互いに仲が良い訳じゃない・・・あわよくばと考えてる・・・そう思わない?》


「国家間の戦争?でもそんなの何年も起きてないし・・・それと僕が魔物を創る事がどう関係してくるの?」


《・・・マナが必要とはいえ無限に魔物を創る事が出来るロウ・・・人間からしたら脅威にしかならないわ。敵となったらね。でももし味方なら?》


「味方なら・・・まさか・・・」


《そう・・・ロウが創った魔物で他国に攻め込む・・・そうすれば簡単に大陸は統一出来るでしょうね》


そんな事・・・する訳がない・・・魔物を使って戦争を仕掛けるなんて・・・


《信じられないようだけど過去に人間は同じような事をしているの。ダンジョンブレイクでダンジョンの外に出て来た魔物を誘導し他国にけしかける・・・そうやって相手の国を弱らせて・・・》


「そんな!そんなの習ってない!そんな事するなんて・・・ありえない!」


《ありえるのよ。自らの国がした事なんてわざわざ教える訳ないでしょ?》


「え?・・・じゃあそれをやったのって・・・」


《フーリシア王国・・・この国よ》


「・・・嘘だ・・・それになんでダンコは・・・」


《なぜ知っているかは分からないわ。でも知ってる・・・この国がしてきた事を・・・だからロウが私・・・ダンジョンコアと同化した事は知られてはならない・・・もし知られれば・・・》


信じたくない・・・けどダンコが嘘をついてるとは思えなかった


フーリシア王国が過去に魔物を使って他国を攻めた・・・もし僕が魔物を創れると国が知ったら・・・歴史は繰り返す?


言い知れぬ不安が押し寄せ、僕はそれ以上何も言えなくなってしまった





「はあ・・・はあ・・・クソッタレ!なんでギルド長がダンジョンに!!」


「頭・・・どうします?もう村には戻れな・・・」


「分かってんよ!今考えてるから黙っとけ!!」


クソッ!これじゃ計画は台無しだ!運良く兵士には見つからず逃げて来れたけど・・・このままじゃ計画が・・・


「す、すいやせん!・・・でもアイツら俺らの事『タートル』だと勘違いしてやしたし・・・他の街に行けば・・・」


「・・・」


「頭?」


チッ・・・もう来たか・・・


「誰だ!!」


俺が気付いた後に他の奴らも気配に気付いたようだ。村の外に逃げて来たばかりってのに・・・粛清に来たか?それとも・・・


「やあ、どうやら失敗したようだな」


「なんだてめえ!」


「よせ・・・仲間だ・・・」


「へ?仲間?・・・頭?」


コイツら末端・・・いや、末端ですらねえか・・・知らねえのも無理はねえ・・・俺も言ってねえしな・・・


姿を現した男・・・は周到にもフードを深く被り顔を隠す・・・どうせ隠しても意味ねえってのに・・・


「悪ぃ・・・邪魔が入った・・・」


「知っている。私の計画が上手く行くか近くで見てたけど・・・まさか初っ端からしくじるとは・・・どうやら邪魔者は『風鳴り』だけじゃなかったみたいだな」


「知ってるのか?ギルド長がダンジョンに来た理由を・・・」


「さあ?でもギルド長がギルドから出て行く前にガラスが割れる音が2階からしたから・・・その時に何かあったんだろうな」


「ガラスの割れる音?」


外部からの報せ?誰かが俺達の事を見てた?いや・・・ありえねえ・・・部屋の中の会話までは聞けないはず・・・見てたとしても内容までは分からねえはずだ・・・それなのにギルド長に報せる?もしかして初めから警戒されてたか?


「とにかく失敗は失敗・・・もう同じ手は難しい。これから集めるのも面倒だ・・・」


「頭・・・さっきからなんの事で?計画とか同じ手とか・・・俺らで組合を立ち上げて村を仕切るんじゃなかったんすか?」


「・・・そうだ・・・その計画で間違いねえ・・・」


「そうそう・・・君達が組合を作る。そこまでは君達の知ってる通りだ。でもこの計画には続きがあってな・・・悪の限りを尽くす君達の組合を倒す組合が登場するはずになってたんだ・・・だから君達みたいにガラの悪い使えない者達を集めたんだが・・・もう必要ないな」


「はあ?てめえ何言って・・・ギャ!?」


レオンが指を鳴らすと6つの小規模な爆発が起きた


ファイヤーボム・・・いつの間に火種を・・・


頭が吹き飛び次々に倒れる・・・俺を除いた全員が・・・処理された・・・


「悪いな・・・苦労して集めてもらったのに」


「・・・俺も・・・殺すか?」


「うーん・・・せっかくも揃いそうだから・・・今回は許してあげよう。ただし・・・」


レオンは一気に距離を詰めて俺の目の前まで来た


この距離なら殺れる・・・殺られる前に・・・


剣を抜き首筋へと滑らせる


だが・・・


「許してあげると言ってるのに・・まあもし仕掛けて来なかったら殺してたが・・・良かったなハズン」


俺の剣は盾で防がれた


いつの間に・・・レオンに気を取られて気付かなかったか・・・


両腕に小さい盾を装着している女は無言で俺の剣を受け止めた。見た事ない女だ・・・また増やしたのか・・・


「君のパーティーメンバーだ。今後は仲良くやってくれ」


「本当に・・・殺さないのか?」


「言ったろ?確かに失敗はしたけど許してあげようって・・・まあここで私の殺気を感じても何もしなかったら・・・殺してたけど、な」


「・・・そりゃどうも・・・で、俺はどうすりゃいい?」


「この村での君の出番はずっと後・・・だからしばらくどっかのダンジョンで遊んで来い。後は私達に任せてさ」


物陰から姿を現すメンバー達・・・二軍と言われても悔しくねえのは認めちまってるからだ・・・こいつらの実力を


「・・・いずれ一軍になってやる・・・」


「その意気だハズン・・・でもまあ・・・無理だろうけど、な」


そう言うとレオンは背を向け去って行った


それと同時に気配がいくつか消える


「行きましょうハズン・モーシス」


「・・・わーってるよ・・・てか、俺の名前は知ってるようだけど・・・俺はお前を知らねえ・・・自己紹介もなしか?」


「そうね・・・これからパーティーメンバーになるのだから名前くらいは・・・私の名前はシル・アーネス・・・二軍のタンカーよ」

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