第27話

昼は門番、夜はダンジョン経営の日々が続き身も心も疲れ果てていた時に一筋の光が射し込んだ


スラミが魔物の配置が出来るかも知れない・・・ただ配置するのではなくちゃんと教えた通りに出来るかどうか・・・という訳で休みの日にスラミの『代行者』デビューを見守る事になった


「いいか?スラミ・・・1階はスライム、ブラッドドッグ、バウンドキャットのみ・・・で、今配置している魔物が倒されたら代わりの魔物を倒した冒険者が去った後に配置する。分かったな?」


「はい」


「よし、じゃあ早速やってみよう」


とりあえずどれくらいの理解力があるか不明だから最初は1階だけにしてみた。もし普通にこなせるなら2階3階と増やしていき最終的には宝箱や罠なども任せる事が出来れば僕の負担もだいぶ軽くなる


そうすれば訓練する時間も・・・って、そこでもスラミに頼るとかなりスラミの負担が大きいな・・・疲れ知らずといっても休ませてあげないと可哀想だ・・・その辺は気を付けないとな



しばらくして冒険者がちらほらやって来る


ほとんどの冒険者がゲートを使い自分達に合った階に行く中、1階から始める冒険者一行がいた


見た事ない冒険者だからこのダンジョンは初めてなのかも・・・でも見た目は新人ぽくないから他のダンジョンから移って来たのかも


その見た目通り実力も確かで1階にいる魔物はあっさりと倒してしまう


倒して魔物から出る魔核を拾い、奥へと進む


この一連の流れの後で・・・


「スラミ・・・今だ!」


魔物を配置する


奥へと進んだ冒険者が戻って来たら配置された魔物と再度戦闘になるがほとんどの冒険者は行き止まりや帰る時以外は道を戻ったりしない。元から分かれ道で片方が行き止まりの前に魔物を配置してないから、再配置された魔物と戦闘になることはほとんどないだろう


問題は・・・マナ切れで途中で引き返す場合だ


低階層なら問題ないかも知れないけど、これから魔物が強くなっていき冒険者がその階の途中でマナ切れになって引き返そうとした時・・・再配置された魔物と戦わなくてはいけなくなる


そうなると全滅必至・・・うーん、どうしよう


《再配置の時間を下に行くほど長くすれば?例えば1階なら1分後・・・10階なら10分後とかにね》


なるほど・・・タイミングを見て配置するのではなく時間で・・・それなら再配置の前に戻れるかも・・・


その階の広さ、魔物の強さによって時間を変える・・・どれ位かは今後調査する必要があるな・・・例えば僕が試しにダンジョンを歩いたりして時間を計れば・・・


「それいいかもね。あとさ・・・道具で簡易ゲートみたいの作れないかな?いざって時に使えれば生存率も上がりそうだし・・・」


《各階にゲートを作ったのに・・・至り尽くせりね。もちろん作れるわよ?ただ・・・》


「ただ?」


《無駄。作るマナの量が無駄なのよ・・・売ってお金にしても意味ないしね》


なるほど・・・確かにお金を稼ぎたいならお金自体を作ってしまえばいいし・・・あっ!


「ねえ、簡易ゲートとは別の話になるけど、お金をいっぱい作ってマナポーションを買い締めて僕がダンジョンでマナを使えばマナがかなり溜まると思わない?」


《やめといた方がいいわ》


「なんで?」


《マナポーションってどうやって作るか知ってる?》


「・・・さあ?」


《冒険者が持ち帰った魔核からマナを抽出してるの。魔核は魔物がマナを溜める場所・・・魔物から取り出してマナが残っていればそこから抽出出来るわ。もし空っぽでも時間が経てば増えてくる》


「ほうほう・・・で?」


《で?じゃないわよ。分からない?もしロウの言った方法をするのならもっと効率的な方法があるわ・・・魔物を殺して魔核を取り出しマナが溜まったら壊せばいい。魔核の中にあるマナが放出してダンジョンが吸収すれば私達のマナとなる》


「あー・・・つまりマナポーションを使うって事は間にマナポーションを作る過程が入っただけって事か」


《そういう事。ちなみに魔核を作って壊す案も却下だからね。魔核を作る必要量と回収量を比較すると魔核を作る必要量の方が多いの。つまり完全に無駄な作業になるって訳》


良い案だと思ったけどダメか・・・やっぱり冒険者に来てもらってマナを消費してもらうのが一番効率がいいってことになるのか・・・


マナを消費・・・ん?


「ねえ・・・さっきの簡易ゲートの件なんだけど・・・お金で売るんじゃなくてマナで売るっていうのはどうかな?」


《・・・は?マナで売るって・・・》


「例えば・・・マナ測定器みたいなものを作って、ある一定のマナを使えば賞品として簡易ゲートや色んなものをプレゼント!みたいな」


《うーん・・・面白いけどどうやってマナを使わせる気?ただマナを放出するなんて人間には出来ないわよ?ていうか魔物でも無理》


「そっか・・・無理か・・・」


《どんだけ簡易ゲート作りたいのよ》


「いや、だって・・・何か危険な目に合った時に持っていれば助かるかも知れないだろ?毎回僕が助けに行けるとも限らないし・・・生きて何度もダンジョンに入ってくれた方がマナも稼げるし・・・」


《アナタ全ての冒険者を助けるつもりだったの?》


「そういう訳じゃないけど・・・でも出来れば・・・」


《・・・ハア・・・まあ確かにダンジョンは人間を殺す事が目的じゃないからいいけど・・・そんな事してたら体が持たないわよ?それに精神的にも・・・》


「・・・」


全ての命を拾えるなんて僕も思っていない


いずれ僕の創った魔物が冒険者を・・・


それでも、もし手を伸ばして届くなら・・・助けを求める手を取りたいと思うのはおかしいのだろうか・・・


《・・・とにかくあまり人間を甘やかしてもいい事ないわよ?ダンジョンに入るのはあくまで自己責任。死ぬのが嫌なら入らなければいいだけ・・・私達の考える事は如何に人間にダンジョンに入ってもらうか・・・それだけよ》


厳しいようだけどダンコの言う通りだ


別に強制している訳じゃない


冒険者は自らの命を懸けて手に入れようとしてるんだ・・・栄光と財宝を


僕は冒険者のその覚悟に合ったものを提供していく・・・それが冒険者に対する報い。命懸けで戦った冒険者に対する報酬・・・報酬?


「ああ、そうか・・・報酬・・・宝箱に簡易ゲート入れればいいんだ」


《・・・まっ、それは好きにして》


うんうん、そうだそうだ。売ってもお金が返ってくるだけなら損だけど報酬なら『冒険者達が苦労して(マナを消費して)得た報酬』だからダンジョンとしても損はない


これで無茶をしても簡易ゲートで助かる冒険者も出て来るし、僕も助けに行かないで済む・・・ダンコはあまり僕が冒険者を助けるのをよく思ってないし・・・


《そもそも無茶をするのが間違ってるのだけどね。せっかく段階を踏んで強くしていってるのに意味ないじゃない》


「でもスラミが居れば解決出来るだろ?ほら、運良く前のパーティーが倒してしまった後を歩いて魔物と1回も遭遇しないで次の階へ・・・ってのがなくなる訳だし」


《・・・そもそも弱過ぎなのよ。もっとガンガン来てくれないとこっちもやり甲斐がないわ》


「ガンガン来られても大変そうだけど・・・まだ6階しかないし・・・それに冒険者もダンジョンで鍛えるしかないからゆっくりとでいいんじゃない?」


《それで間に合うといいけどね・・・5年後・・・来るんでしょ?》


うっ、確かに


5年後にと煽っておいてこのままでディーン様に対抗出来るのだろうか・・・もっと強い冒険者が来てたっぷりマナを使ってくれればいいのに。あ、でも強過ぎるとマナを使わず魔物を倒しちゃうかも・・・あー!バランスが難しい!けっきょ今いる冒険者が強くなってダンジョンもそれに合わせて強くなるしかないのか・・・


今いる冒険者が適度に強くなってくれれば一番いいのに・・・強くなり過ぎずかと言って弱過ぎず・・・・・・・・・あっ


「強くなるんじゃなくて・・・上手くなればいいんだ・・・」


《?・・・どういうこと?》


「7階を作るのは後回し。僕に・・・考えがある!」




翌朝、試行錯誤しようやく完成した事に満足して大の字に寝っ転がる


もうそろそろ出勤の時間だ。今日はもしかしたら立ったまま寝てしまうかも・・・


《本当に必要なの?》


「ん?」


《こんな何も無い場所が・・・本当に7階を作るよりも価値があるかって聞いてるの》


「どうだろう」


《ロ~ウ?》


「冗談だよ。僕が冒険者なら欲しいと思ったから・・・多分他の冒険者も欲しいと思う。何せここなら命を懸けなくて済むからね」


《まあ命懸けにはならないでしょうけど・・・》


「ダンジョン変動に表のギルド職員が気付いたみたいで報告しに行ったから多分今日中には何かしらのアクションがあると思うよ?ちゃんと書いておいたし有効に扱ってくれればいいけど・・・」


一抹の不安はあるけど・・・多分活用してくれる・・・はず!


《簡易ゲートまで・・・随分と大盤振る舞いね》


「もしかしたらコレを求めてダンジョンに来る人も居るかもしれないし、先行投資だよ先行投資」


《どうだか・・・まあいいわ。とりあえず反応を見てみるとして・・・行かなくていいの?》


「行く・・・けど・・・眠い・・・」


《体も洗ってないし、寝不足で目の下に隈も出来てるんじゃない?不潔、根暗、死神ってまた言われるわよ?》


「・・・体を洗ってないから不潔で、見た目で根暗と言われるのは納得するけど、死神ってなんだ?」


《さあ?・・・まっ、死神って言うのは一番合ってると思うけどね》


「なんでだよ!」


《アナタはダンジョンの創造主であるけど、見方によっては人間を誘い込んで死に至らす死神でもあるって事。死神にしては随分とお優しいけどね》


「・・・誰も死なせないさ・・・」


《・・・》


僕の呟く言葉にダンコは何も答えなかった


恐らくそれは無理なのだろう・・・けど・・・


「死なせない・・・死なせるもんか・・・」


ダンコはマナが稼げれば文句は言って来ない。だからマナを稼ぎつつ冒険者達を守る・・・その為なら寝不足くらい・・・


《私はどうでもいいけど・・・遅刻するわよ?》


「はっ!・・・寝てた!」


やっぱり少しは寝た方がいいかも・・・


今日の夜は早目に帰って寝ようと心に決めてゲートを開く


制服に着替えて門まで向かいながら作ったものはどんな反響があるか少し楽しみになってきた



僕の意図が伝わる事を信じつつ、今日も村に来る人を迎えるのであった

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