第22話
いつもより優しいキス。
わたしにふれる手はもっと優しい。
知らない自分。
知らない遼。
初めては全部、遼。
キスをしたのも、それ以上も――
その時わたしは18歳だった。
少し眠って、目を開けると、遼はまだしっかりとわたしの指に自分の指を絡ませたまま、隣で眠っていた。
これが「愛」って呼ばれてるものなのかな、なんて、そんなことを考えながら、もう一度目を閉じた。
次に目を開けた時、隣にいるはずの遼はいなくて、一人でベッドにいた。
カーテンの隙間から陽の光が差し込んでいる。
重い体を起こすと、キッチンにいた遼が駆け寄ってきた。
「起きた? よく眠ってたから起こさなかったんだけど」
「隣に……いてくれると思ったのに」
「ごめんっ。起きたらお腹すいてるかもしれないと思って、朝ごはん用意してた」
「遼が作った朝ごはん?」
「あー……期待はしないで。焼いただけ」
「焼いただけ?」
「パンを焼いて、卵とベーコンを焼いた」
「焼いただけだね」
「だからそう言ったけど?」
ベッドの上で掛け布団にくるまったわたしの頭を、遼が優しく撫でた。
「かわいい」
「なんか、軽い」
「え? 思ったままを言っただけなのに『軽い』とか言われたら、オレ、どーしたらいいの?」
「ふふふ」
「何? その笑い?」
「昨日、わたしのこと何回『好き』って言ったか覚えてる?」
「数えてた?」
「うん」
「何回言った?」
「途中まで数えてたけどすぐにわかんなくなった」
「ご飯食べる?」
「食べたい……服着るから、あっち向いてて」
「昨日全部見たのに?」
枕を投げたら、遼が「ごめんって」と言って笑った。
「なーなーちゃん」
ベッドの端に座った遼がキスをしてくる。
キスをしながら、その手がからだにふれてきた。
「明るいの……恥ずかしい」
「だめ?」
「だめとかじゃなくて……」
「後ろ向いて。顔、見えなかったら恥ずかしくないかも」
「や……」
「本当に嫌ならやめるから」
「……意地悪」
「菜々子がかわいいのが悪い」
「ずるい」
「これ、嫌?」
ずるい。
嫌って言わないのわかってて……
「本気で菜々子のこと好きだから」
「ん……」
わたしもね、遼が大好きだよ。
こんなにね、幸せでいいのかな?
そんなふうに思った気持ちに嘘はない。
いつだって、真剣だった。本気だった。
お互いがそうなんだと信じてた。
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