いいや、違うね。
甘味と厚味が過ぎてから苦い季節を迎える。
目が覚めた。落ち着いた匂いが鼻を通り、口の中がすこし乾燥している気がする。毛布を退かし、立つ、そんな行動に安心感を感じ、ごはんを食べる。
「外に出るか」
踵の部分が柔らかくなったスニーカーを履き、
家から出た瞬間の世界は少し暗くなって、赤く綺麗に見える。
外に出たところで、何も起きないのは知っているが、何か起きるかもしれないワクワクを感じるために出る。一つ一つ違う日々に空きが来た。寒さもなくなり、ちょうど過ごしやすい時期だ。
この世界にはいろんな人がいる。インターネットの世界にも様々な人がいるが、現実世界のみんなは、やはり一人一人違う。
笑顔で会話を交わす人、水平線を見つめてるように真っすぐ歩く人、憎悪の心を持つ人もいる。一人一人違い過ぎて、頑張ればこの世界の全員覚えれる自信がある。そんなことを考えながら今日もダイヤみたいな輝きのコンクリートを踏みつける。
そうやって歩き、赤信号で止まったときに下を向いて反対の道を歩いている少年が鍵を落としているのが見えた。青信号になった瞬間に走り鍵を拾い、赤信号で止まっている少年を引き留める。
「鍵、落としましたよ」
そう言う。優しく言えているだろうか。
少年が振り返った時に彼の前に鍵を出す。
『え、ありがとう..ございます』
感謝の言葉を送ってくれた。いつになっても感謝はうれしい。
「いいんですよ。気を付けてくださいね」
会話が進む、少年の笑顔が眩しく思える。
振り返ってまた歩き出したときに少年が小声で何か言っていた気がする。
何かはわからないが上向きの言葉だったらうれしいな。
私ももう長くない。誰かの活力になる、誰かの助けになる、誰かの人生をいい方向へと向かわせる脇役になれれば......いいのだが。
未定 @Hakuretto
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