第12話「決勝への道」



工場の片隅。予選終了まで残り10分。

ユウトの告白が、静かに始まった。


「影の商人は、物語を集める」

眼鏡を直しながら、ユウトが語り出す。

「人々の大切な記憶、心の奥底にある物語を」


「なんのために?」

空が問う。


「力を手に入れるため。他人の物語を歪めて、自分のものにする」


アリアが身震いする。

「それは、私の記憶とも……?」


「ああ」

ユウトが頷く。

「アリアの封印された記憶。それは、とてつもない物語の力を秘めている」


その時、警報が鳴り響いた。


「予選、残り5分!」

街中に実行委員長の声が響く。

「各チーム、中央広場に集合!」


「行こう」

空が立ち上がる。

「お前の過去は、お前の物語の一部だ。それを否定する必要はない」


「空……」


「私も」

アリアが微笑む。

「ユウトさんを、信じています」


ユウトの眼鏡が、涙で曇る。



中央広場。

予選を勝ち抜いたチームが、次々と集まってくる。


「全16チームが出揃いました!」

実行委員長の声が響く。


レインのチーム。

クラウドの影の如き三人組。

そして――


「見ろよ、あいつら」


バーニング・テイルも、予選を突破していた。


「これより、決勝トーナメントの組み合わせ抽選を行います!」


巨大なホログラムに、トーナメント表が浮かび上がる。


空たちのチームは、一回戦でレインと対戦。

準決勝でクラウドと当たる可能性がある。

そして決勝では――


「影の商人の手先どもが待ってるってわけか」

ユウトが呟く。


「ユウト」

空が告げる。

「お前の物語は、もう歪められない」


「ああ」

ユウトの眼鏡が光る。

「今度は僕が、影の商人の野望を止める番だ」


アリアのカードが、希望に輝くように光を放つ。

三人の新たな物語が、今始まろうとしていた。


しかしその時。

クラウドが不吉な微笑みを浮かべる。


「記憶が解放されれば、全てが終わる」

彼の囁きは、風にかき消されていった。

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