第7話: 危機の訪れ

董卓が酒を断つ決意を見せ始めてから、屋敷の中では緊張が高まっていた。貂蝉は彼の隣で変わらず支え続けていたが、周囲の空気はどこか険しいものへと変化していた。


ある夜、董卓が寝室で休んでいる間、貂蝉はふとした物音に気づいた。耳を澄ますと、それは廊下をゆっくりと歩く足音だった。不吉な予感に駆られた貂蝉は、音のする方向に静かに足を運んだ。


薄暗い廊下の先には、董卓の最も信頼していた副官の姿があった。彼は何かを手に握りしめており、その目は迷いのない冷酷さを帯びていた。


「あなたは何をしているのですか?」貂蝉が問いかけると、副官は驚いた表情を見せたが、すぐに冷静さを取り戻した。


「貂蝉殿、これは董卓様のためです。あの方が変わりすぎてしまった。我々が知っている董卓様を取り戻さなければ、国も軍も混乱するだけだ」


貂蝉はその言葉に怒りを抑えながら返した。「あなたが言う『董卓様を取り戻す』とは、酒に溺れる以前の姿を再現することですか?それは本当に彼のためになるのですか?」


副官は答えず、彼女を押しのけようとした。しかし、貂蝉はその場から動かなかった。


「私がここにいる限り、あなたに彼を傷つけさせることはできません」と貂蝉は毅然と告げた。その言葉に、一瞬副官は立ちすくんだが、やがて彼の目には怒りの色が浮かんだ。「あなたが彼を弱くしたのだ。あなたさえいなければ…」


その時、別の部下が物音を聞きつけて駆けつけてきた。「何をしているのだ!」と声を上げ、緊迫した空気がさらに張り詰めた。


その場は最終的に騒ぎとなり、董卓が目を覚ますほどだった。混乱の中で、副官は逃げ出し、その後の行方はわからなくなった。


董卓は事情を聞き、静かにこう言った。「またもや、私の周りで争いが起きてしまった。これは私の弱さゆえか…」


貂蝉は彼の前に膝をつき、真剣な眼差しで言葉を紡いだ。「董卓様、これはあなたのせいではありません。変わろうとする勇気を持つ者には、必ず試練が訪れるものです。どうかその歩みを止めないでください」


董卓はしばらくの間沈黙していたが、やがて貂蝉の手をそっと握りしめた。「お前の言葉を信じる。そして、私は変わる努力を続ける」


だが、この出来事は二人にとっての新たな課題を示していた。董卓の変化を喜ばない者たちがまだいるという現実。そして、その影はこれからさらに濃くなり、彼らの絆を試すことになるだろう。

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