第3話「天才プログラマー現る」



アイリス家の書斎で、コウは魔法取引所のシステム設計に頭を悩ませていた。


「従来の魔力取引は、全てギルドの公証人を通さないといけないのね」

アイリスが古い契約書を広げながら説明する。


「でもそれじゃあ、自由な取引は実現できないピコ!」

ピコが宙を舞いながら叫ぶ。


「ブロックチェーンみたいな仕組みが必要なんですが...」

コウが呟いた瞬間、窓の外から謎の影が飛び込んできた。


「ブロックチェーン? それ、私に任せてよ」


黒いローブを纏った少女が、優雅に着地する。フードを取ると、紫色の髪と知的な瞳が現れた。


「リザ・クリプト。魔法プログラマーよ」


「魔法...プログラマー?」

コウが困惑する中、リザは小さな水晶を取り出した。


「コード魔法、発動」


水晶から無数の光の糸が放たれ、空中にプログラムのような文様が浮かび上がる。


「これが魔法プログラムピコ! スゴイピコ!」


「ねぇ、これって何をしているの?」

エリカが純粋な好奇心から尋ねる。


「簡単に言うと...」

リザが説明を始めようとした時、エリカの直感が働いた。


「あっ! このパターン、市場が動く!」


次の瞬間、街中の魔力価格表示が一斉に変動し始める。


「『初心者の大勝法』が反応した...」

コウの左目が光る。「市場予知の魔眼」も同じ変動を捉えていた。


「私の『コード魔法』と、エリカの直感...」

リザが目を輝かせる。

「これを組み合わせれば、完全な自動取引システムが作れるかも」


「その通りピコ! 魔法とプログラムの融合ピコ!」


しかし、その時、重苦しい空気が部屋に満ちる。窓から漆黒の霧が忍び寄ってきた。


「これは...禁忌の古代魔法!」

アイリスが叫ぶ。


霧の中から浮かび上がる不気味な文字列。

『立入禁止 - 経済特区規制法違反』


「やっぱり、ギルドは私たちを放っておかないようね」

リザが眉をひそめる。


「でも、もう後には引けない」

コウは決意を固める。

「僕たちの取引所は、必ず実現させる」


暗雲が立ち込めるアイリス邸の上空で、不吉な雷鳴が轟いていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る