第2話「伝説の取引所を作れ!」



マジカル・マーケット中央広場の一角にある高級カフェで、アイリスはコウに状況を説明していた。


「私たちの世界では、魔力がデジタルエネルギーとして取引されているの。でも、このシステムがもう限界を迎えつつあるわ」


ホログラム画面には、乱高下を続ける魔力の価格チャートが映し出されている。


「ピコ的に説明すると、従来の魔法ギルドが価格決定権を握りすぎているのが問題ピコ!」


コウは左目の「市場予知の魔眼」を活性化させ、市場の流れを読み取る。そこには人々の思惑が織りなす複雑な糸が見えた。


「これは...市場の歪みですね。完全な自由取引ができていない」


「さすがピコ! その通りピコ!」


その時、カフェの扉が激しく開かれ、一人の少女が転がるように飛び込んできた。


「あ、いたた...」


銀髪の少女は、まるで記憶を失くしたかのように周囲を見回している。


「大丈夫?」アイリスが駆け寄る。


「えっと...私、エリカです。それ以外のことは...思い出せなくて」


コウが「市場予知の魔眼」で彼女を見ると、驚くべき才能が眠っているのが分かった。市場の動きを純粋な直感で読み取る能力—「初心者の大勝法」。


「面白い提案があります」コウは立ち上がる。「新しい取引所を作りませんか? 完全自由競争型の」


「取引所!?」アイリスが目を見開く。


「ギルドに依存しない、透明性の高いマーケットを。エリカさんの直感的な判断力も、必ず活きるはずです」


「でもピコ、伝統的な魔法ギルドが黙ってないピコよ?」


その言葉通り、カフェの外では既にギルドの監視の目が光っていた。


「構いません。市場に自由を。それが、僕がここに召喚された理由のはずです」


アイリスは一瞬考え込み、そして凛とした笑顔を見せた。


「面白そうね。私も全面的に協力するわ」


「エリカさんも、一緒にいかがですか?」


「はい! 私にできることがあれば...!」


その時、突如として街全体にアラートが鳴り響いた。


「警告! 魔力相場の緊急事態発生!」


コウの左目が疼く。「市場予知の魔眼」が、未曾有の暴落を予見していた。


「行きましょう。僕たちの取引所が、この世界を変える第一歩を踏み出す時が来たようです」


窓の外では、不穏な空気が街全体を包み込んでいた。

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