第11話

街は静かだった。





そして寒い。





運転手が言ったとおりだった。

鼻も指先も凍りついたように次第に感覚が遠のいていく。





なんとなく自分の居場所は分かる。

でもタクシーで通り過ぎるのと自分の足で歩くのでは、当たり前だけど感じが違いすぎる。





鼻をすすると奥のほうがツンとして、また視界が滲んだ。





好きだった。

きっと私は、彼のことがものすごく好きだったんだ。





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