第2話 許されぬ相思相愛

 私と雪矢は、この高校で出会った。


 私は22歳の新米教師で雪矢は16歳だった。


 雪矢から愛の告白をされたときには驚いたし、道徳的にそれは受け入れられないと、一度は拒絶した。


 しかし、私は嬉しさを隠すことができなかった。


 人目を引く雪矢のビジュアルに、無意識に目を奪われていたし、彼と話すときには、教員と生徒としてではなく、人間同士として対等に会話をしたいと思っていたことに、告白されて初めて気づいたのだ。


 今度は、私のほうから告白した。


 雪矢は飛び上がって喜び、そんな彼を見て私は幸せを噛み締めていた。


 禁断の恋に落ちた私たちは、誰にも知られることなく、表向きは教師と生徒として、放課後や休みの日には普通の恋人のように過ごした。


 みつかってはいけない恋愛というのは、吊り橋を渡るようなスリルがあって、私たちはすっかりその綱渡りの恋を楽しむようになっていた。


 しかし、終わりは唐突に訪れた。


 学校に、保護者から連絡があったのだ。


 数学教師の女性と、教え子の男子生徒が、休みの日にデートしていたところを見かけた、というものだった。


 私たちは、関係の発覚を避けて主に私のマンションで逢瀬を重ねていた。


 運悪く目撃されたのは、たまには外でデートしたいという雪矢の望みを叶えるべく街に出かけ、加えて雪矢から手を握られ、どう見ても、デートしている男女としか見えない行動をとってしまった日のことだった。


 私と雪矢は校長はじめ教師から事情聴取を受けた。


 私は知らぬ存ぜぬで切り抜けようとしていたのだが、そこで、雪矢は私と付き合っていることを認めてしまった。


 保護者からは批判が相次ぎ、私は責任をとって、退職へと追い込まれた。


 若く未来のある雪矢を守るべく、身を引くつもりだった。


 それが大人のとるべき行動だと信じて。


 自宅謹慎となった雪矢のそれからのことを、私は知らない。


 彼がなにを考えていたか、推し量ることはできなかった。

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