第2話
そして、突然出会った俺たち二人は、学校の屋上にいた。
普段女子と会話する機会なんてない俺は、少し緊張していた。
「ってことは君、道に落ちてた剣を拾った…ってこと?」
「まあ、そうなるかな」
拾った理由は言いづらかった。
「でも見たところ、いい剣だね」
「…そうなのか?」
「クラスで言うと、A-…」
「クラス…」
自分の剣をランク付けされて、俺は少しショックを受けた。
A-の-が何なのか…。
Aにギリギリ足りない…って事なのか…?
そんな風に俺が考え事をしていると、
「君、名前は何て言うの?」
と、彼女がそう俺に尋ねた。
名前…?
「蓮…」
「蓮君、ね」
そう言うと彼女は俺の武器を上から下までさっと目を通すと、
「弓が剣と一体化してるんだね」
と言った。
「ああ、こういうのって珍しいのか?」
「そうでもない、かな。だから戦いでは基本的に読み合いの心理戦になる」
「戦う…?」
そして俺は…、確かにこんな剣、戦闘用に使う武器以外の何物でもないな、と今更ながら思った。
なぜ剣を拾ったのか…?俺は早くも後悔し始めていた。
出会いは唐突だったが、彼女と話していると…、少し大袈裟かも知れないが、曇っていた世界が次第に開けたような…、そんな気がした…。
「ああ、自己紹介し忘れてた。あたしの名前は…、大室ちとせよ、覚えててね」
「ん…?ああ…そんな簡単には忘れないと思うよ」
□□□
今日は、色んな事があった。
家路について、久しぶりに、お袋と親父と一緒に飯を食った。
風呂に入って、布団で眠る。
明日は、何があるだろう?
□□□
次の日の放課後、俺は昨日出会った少女にまた会える気がして、仄かな期待を胸に学校の屋上で一人待っていた。
けれど彼女は来ない。まあ当然か、と半分がっかりして、俺は学校を後にした。
下校途中、階段を下っていると、上着の襟を掴まれて、そして少女の声で、俺の名を呼ぶ声がした。
「蓮君」
「他の呼び止め方は無いのか…?」
だが俺はなぜかほっとした心持ちだった。俺は剣についてあまり詳しくない。
現状、頼れるのは彼女だけだ。
そして、再度俺たちは屋上へと来た。
開口一番、彼女は、
「それじゃあ、課外授業と行きますか」
こう言った。
「課外授業…?」
「少しは手加減するから、その剣で組手をしましょう」
…まあ、剣の使い方は剣に触った時に頭に流れ込んできたから問題ないはずだ。
間をとって二人は対峙する。
「それじゃ、いくわよ…」
そう言うと、大室は凄まじいスピードでこっちに突っ込んできた。
時速にしておよそ60キロ…まるで瞬間移動だ。俺は震えた。
武器は機械仕掛けの短剣2本。彼女は、それを両手に持って、高速でこちらに迫り来る。武器は、スチームパンクのような蛍光色を撒き散らし、それが変形しながら、作動音をかき鳴ならしている。
大室が走りながら少し跳ねると、緑色の蛍光色の光が追従して2本の線を描いた。
俺は、頭に流れ込んできた剣の使い方の通り、剣を水平に上に向け、矢を一斉掃射した。
そしてそれらは無軌道な軌跡を描き、(なんだか、どこかで見たことがある気がする…)大室をホーミングする。
それを大室は剣で踊りでも舞うかのような鮮やかな動きで全てを撃ち落として、そこでこう言った。
「もういいわ」
「ん?ああ…」
俺はと言うと…、彼女の剣技に少し見惚れていた…。
彼女の舞のような剣に、感銘すら覚えた程だった。
そして、弓と剣なら接近戦では剣が優位になるだろうな、とぼんやり思った。
すると、彼女は横目で俺を見ると、正面を向いて少し考えて、
「…ちょうど、バディを探してたんだよね…」
不意に、そう言った。
「バディ?」
「君だよ」
「俺か…」
だが右も左も分からない今、仲間がいるのは心強い。
「しょうがない…、組もう」
「しょうがない、ってどういう事…?」
□□□
また、列車の夢だ。モッズコートのフードを深く被った男と、車内に二人。
「仲間が、出来たみたいだね」
まあ、仲間といえば仲間かもしれない。
「はい」
「君の剣、興味深い…」
「…え?」
そこで目が覚めた。
ベッドから起き上がった俺の目が捉えたのは…
部屋の約5分の1を占めるほどに巨大化した氷だった。
どうなっているのか、内を覗こうとしたが、内部のことは窺い知ることができない。
「これは…」
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