ああ、ああ! 美しい!
「ああ、ああ! 美しい!」
一人きり、敬遠な信徒はその目に映る光景に感動をしていた。少々気持ち悪い声を漏らしていたが、その感動は本物であろう。そこは緑に侵食された半ば廃墟と化している教会であった。欠けた天井から偶像へと光が降り注ぎ、一層神々しさを増し、この世の廃退さを見せつけている。
「おぉ、おおぉ……。」
うめき声を出す剃髪の老人は簡素な青色のローブに身を包んでいるが、見るものが見ればそれがかなり上等なものであるとわかるだろう。老人はこの髪を崇める教主、つまりトップであった。
「いつまでそうしているつもりだ。」
不意に声を掛ける者がいた。彼は最初からこの光景をぼんやりと眺めていたが、あまり時間がないのに、ずっと気持ち悪い祈りを捧げていることにイライラしてきたのだろう。
「おお! エトワール様、もうすぐで終わります。出立すればしばらくお会いできなくなるので、つい時間をかけてしまいました。お許しください。」
涙を垂れ流しながら普通のように振る舞い、果てには笑顔を見せるその姿には、不気味を通り越して恐怖すら感じる。
「お前が離れれば崇めるものが居なくなるのはわかるが、程々にしろ。
「ああ! そうでございました。我らが神をお救いくださった主に報いねば!」
未だ、涙を垂れ流しながら手を挙げ雄叫びをあげる奇行に、もはやエトワールは疲れた表情を隠そうともしない。
「我らがって、お前しか居ないだろう。」
小声でボソリと呟かれたそれは、幸いにも老人の耳に入ることはなかったようだ。雄叫びを止め、ずっと流していた涙すら止め、気持ちの悪い笑顔を見せる老人はエトワールに向き直る。
「では、行きましょうぞ。」
「はぁ、早く行くぞ。《預言者|The Blind》》の本領発揮何だからな。」
先ほどとは打って変わって息遣いすら聞こえない静寂の中、二人は廃教会から出ていくのだった。
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