11.


しばらく押し問答している時、遠慮なく扉が開かれた。

突然の第三者に大河と共に驚き、そちらに見やると、小口がそこにいた。


「やっぱりここにいたんですね」


ちらりとこちらを見た小口は続けてこう言った。


「ママさまの裸を見たいからって、さっきママさまに嘘を吐かせましたね。そんな変態的趣味をその歳から持ち合わせなくてもいいんです」


「ほら、行きますよ」と入ってきては大河のことを抱っこしようとしたのだろう。両腕を抱える仕草をした。

ところが、大河は小口の脇からするりと抜け、そのまま開け放たれた廊下へと飛び出して行った。


「全く、世話の焼けるお子さんですね」


ため息混じりに出て行った先を見つめていた。


「⋯⋯ご迷惑をおかけします⋯⋯」

「いえ、わたしも気づいてはいたのですが、さすがに人様の裸を見てしまうかもしれないと思い、躊躇ってしまいましたね」


大河との会話からも思っていたが、やはりあの時の嘘はとっくのとうに気づかれていたようだ。

今も廊下の方に目を向けているのも気を遣っているのだろうか。


「とにかく、今度こそは捕まえておくので、姫宮さまはゆっくりとしていてください」

「はい」


そう言うや否や、小口は出て行った。

それを見届けた後、姫宮はお言葉に甘えて、湯冷めがしてきたのもあり、湯船にもう一度浸かろうと風呂場へと戻っていった。

余計なことをしてしまった萎みを充分に洗い流して。

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