第3話

 トリトンさん改めて国王陛下が本名を言うと周りの人々が一斉に片膝をつき頭を下げる。私もそれに倣い頭を下げようとするが止められた。


「よいよい。間違って本名を名乗ってしまったがお忍びなのだ。皆、顔を上げてくれ。アヤ、ついてきてくれ」


 そういい国王陛下は歩き始めた。私も後を追うように追いかけていく。その時後ろから声を掛けられ振り返ると私の対応をしてくれていた騎士の男性が立っていた。


「嬢ちゃん、陛下は気さくなお方だ。まじめだが少し抜けているところがあるから頼んだぞ。あぁそれと公式の場以外はがちがちにかしこまらないでもいいぞ」


 そう言って元の場所に戻っていった。国王陛下改めトリトン様についていくこと10分。大きな建物が見えてきた。


「国王陛下、ここが冒険者ギルドですか?」


「公式の場以外では普通にトリトンさんでよい。で、この建物はギルド総本部だ。冒険者ギルド、商業ギルド、不動産屋を兼ねておる。さて、もうお忍びではなくなったな。衛兵、出てきていいぞ」


 トリトンさんがそういうと周りにいた群衆の中から豪華な鎧を着た騎士が2人出てきた。おそらく2人ともトリトンさんの護衛なのだろう。

 トリトンさんが構わず中に入っていったので私も遅れずになかにはいる。すると中にいる人全員がトリトンさんに向けて礼をしていた。


「よいよい、私はこの少女を案内してきただけだから。ところで冒険者ギルド、商業ギルドのマスターはいるか。それと不動産屋の店主もだ。さ、アヤついてこい」


「わかりました」


 私はその一言だけいいトリトンさんについていく。案内されたのは一つの個室だった。中に入ると男性2人と女性1人が待っていた。

 トリトンさんに座れと促されてソファに座る。


「陛下。本日は訪問のご予定は入っていませんでしたがどうなされたのですか?」


「あぁ、公務じゃないから固くならんでくれ。いや、このアヤという少女にギルドの場所を案内してほしいと頼まれてな。連れてきた」


「初めまして。私の名前はアヤと申します。名もない村からこの王都に来たばかりでして…異世…いや父が元冒険者だったものでして。冒険者志望ですが、商売にも興味はあります」


 危ない…つい異世界と言いかけてしまった。気を付けよう。

 そういえば3人とも固まってるんだけど何かしたかな?

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