11. 一つの時代が終わったなぁと思う栗東退厩組(中):お疲れ様メロディーレーン
本当は、一本のエピソードにまとめるつもりでしたが、続報を追いながら内容を精査していたら、書きたいことが多すぎて、どんどんボリュームが出てしまいました。
というわけで、分けます(苦笑)
去る12月25日、同日、栗東トレーニングセンターを同じく退厩した北海道帰郷組の紅一点、小さなアイドルホース、メロディーレーンちゃんの話題です。
小柄な馬体で中長距離を主戦場としながら、2歳から8歳まで走り続けたパワーとスタミナ、体の強さには脱帽の一言です。
その上で、3歳で菊花賞(G1)5着掲示板入り、2024年の引退年には8歳で万葉ステークスに3着するなど、早熟でありながら衰えの緩やかな息の長いステイヤー(長距離馬)として、十二分に大成したと太鼓判を押せる牝馬です。
個人的には、数いるオルフェーヴル産駒の中でも、おそらく最も三冠馬父の競走能力を受け継いだ娘だったと思っています。
2歳新馬戦出走時の馬体重わずか336kg、この馬格でデビューに漕ぎ着けただけでも快挙ですが、生涯36戦走り切った中(G1レース含む)で一度も最後になったことないんですよね、このど根性レディー。
それも、JRA史上最軽量オープン馬でありながら。
自分よりデカい相手との中長距離勝負で、一度として最下位になったことがない(馬格の差があるにもかかわらず馬群に臆せず突っ込むメンタルが鋼すぎる)——という戦績に、この馬の強さの全てが凝縮されていると思います。
しかも、走り終わってどの馬も疲労困憊して呼吸も歩様も乱れている中、一頭だけ頭ブンブンしながらケロッとしているんですよね、このお嬢さん。
足取り軽く戻ってくる小さな体が、その場の誰よりもタフという。
その上で、3歳未勝利(デビューから10戦目)は馬体重340kgで、きっちり勝ち切っている小さな巨人の快進撃ですよ。実力で他馬を黙らせる頼もしさは、本当に圧巻の一言でした。
電卓叩いて現役時代の出場レース総延長距離計算したら、なんと93,100m完走してました(びっくり)
牧場や厩舎関係者が口を揃えて、
「メロディーレーンは、自分が小さいとは思っていない。他馬がデカいだけだと思っている」
というコメントで、何だか全てを察せる気がします(笑)
だから、厩舎でもメロディーレーンの認識を尊重して、通常馬サイズの馬着を着せていたそうです(ポニー用の方がサイズ感は多分合ってるけど、当馬はご機嫌でブカブカの馬着を翻して歩いてた)
ファンの間でも、願いが叶うなら繁殖入りして次世代を残してほしい希望は常々ありましたが、フレームの小ささゆえに妊娠出産時のリスクが高すぎる点が問題視されてきました。
リスクの話を置いておいて、たらればを語るならば、正直、メロディーレーンのオルフェーヴル譲りの競走馬としての能力の高さ、産駒が母より大きければ未来の重賞馬、G1馬も夢ではないかもしれません。
そのたらればの成功例が、半弟のタイトルホルダー(牧場関係者曰く誕生時は小さかったそうですが、その後の育成で標準規格まで成長した結果、G1・3勝、22年JRA賞最優秀4歳以上牡馬に選ばれ、引退後は種牡馬入りしました)なので、母の血を継いで、メロディーレーン仔も小さく生まれて大きく育てば、限りなく期待が持てるんですよね。
9歳で繁殖に上がるのは正直リスクもありますが、陣営も熟慮に熟慮を重ねた上での決断だと思うので、そこはじっと見守りたいと思います。
初年度は、まず子宮と産道を広げて母体の負担を軽くするための試験的な交配になるだろうと予想されているので、何よりもまず、安全第一を最優先に母仔ともに健康であってほしいです。
って、書いていたところで、初仔の相手が古巣、岡田スタッドさんから発表されましたね。
ベンバトルとのことで、うーん、手堅い。
というか、半妹(メーヴェの23ちゃん)の父親やないかい!(馬の世界ではよくある話ですが)
ベンバトルは、そもそも岡田一族がイギリスから引っ張ってきた種牡馬なんですが、現役時の戦績25戦11勝、海外G1を3勝している、すごい馬です(他に言い方無かったんか)
メロディーレーンの母親であるメーヴェもイギリスの生産牧場からきた外国産馬で、押しも押されぬ名牝であることに違いはないのですが、何ぶん受胎率が低いことが最大の難関なんですよね(キタサンブラック、イクイノックス、キズナ等々今をときめく種牡馬たちをチャレンジしたんですが、残念ながら不受胎でした)。
そのメーヴェ母さんと、どうやら相性が良さそうだったのが、一発回答を出したベンバトルなのです。
万が一、メロディーレーンも母親の仔出しの悪さを遺伝的に引き継いでいたらと仮定すると、まずは無事に受胎させることを目的としつつ、牡馬としては小柄(ベンバトルは横幅はあるけれど体高はそこまで大きくない牡馬です)という慎重に選んだ相手が身内の繋養している種牡馬——、費用対効果の面でも信頼度の高さが窺えます。
メーヴェが無事に受胎した実績、23年に生まれた妹の誕生時と現在の体格の良さ、小さく産んでも大きく育てる環境整備等々、さまざまに考慮されたであろうことは疑いようがありません。
陣営のベンバトルに対する信頼の厚さですよ(多分、これに尽きる)
ここまでまとめている間に、岡田スタッドさんから故郷に戻ったメロディーレーンの近況動画が公開されましたね。
右前脚屈腱炎を発症しての引退と聞いていましたが、放牧に出されている様子も元気そうで安心しました。
陣営内でも、本当に可愛がられて大事にされていたのが窺える、ピッカピカの馬体が綺麗ですが、少し寒そうなので早く冬毛が伸びてくるといいですね。もふもふのレーンちゃん、絶対可愛いこと間違いなしですからね。
本当に、お疲れ様でした、メロディーレーン。
これからも健やかに、故郷で元気に第二の馬生を歩みながら長生きしてほしいです(静かに安産祈願する人の図)
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