中編-③
「わわわわわ、ちょっと待って、揺れすぎ揺れすぎ」
「コクぴットの荷重制御に使用していたメモリを追加の戦闘メモリとして運用しています。揺れるのハつまりキルモードが機能している証左です。耐えて下さい」
急旋回後に飛び出して3機を捕捉。隊長機のブースターは私に互換性があるようだ、わたしのお下がりだな。戦闘規模が間違っていたことも考えると内通者の可能性も考えられる。逃すものか。
「向かって右、射撃きます。角度30.05-26.37!」
「ちょちょちょ待て待て」
彼女の代わりにスラスターをふかして回避。
「正面近接、その裏に狙撃手がいます。叩いて回避、すぐ動く!」
「こなくそっ」
高周波ブレードの振動をオフにして棍棒のようにぶっ叩く。反動で狙撃を回避。大丈夫、メルメは確実についてこれている。
「ばぶルガンでツノ付きを止めて、直後に近接機を斬りなさい!」
「もうやってるっ!」
「良い調子です、そのまま隠れて!」
「りょーかい!」
ブースターを回収、これを換装すれば帰還率はほぼ元通りだ。でもあの狙撃手にお返しをしなくては。
「メル、飛ビますよ」
「重力に備えろってことでしょ!」
メルメが耐えることを前提にブースターを最大点火。勢いが出たらパージして換装。
「狙撃手の護衛が来ます。前方から2機左右から1機ずつ!」
「左、正面2、右、正面1で!」
「妥当な判断です。Go!」
左の槍持ちの懐に入りブレードを突き刺す。そのまま方向転換、正面2と衝突、援護が遅れた右はそのままブレードで切り抜けて、最後に正面をーーー
「バックステップ!!」
メルメの声で正面スラスターを思いっきりふかし、狙撃手の一撃をかわす。踏み込み過ぎた正面1の胸部に、狙撃手の弾が直撃した。
「同胞ごと撃つのですか?」
「常識の通じない相手だよ、エクス。マナー違反ぐらいわけないでしょ」
「これは失礼」
正面1の残骸を蹴り飛ばし、狙撃手を見据える。
「もう一度飛ビますよ、メル」
「もう慣れた、Go!」
ブースターをふかしスナイパーに突貫する。正面からライフルの迎撃、角度ら0.0の0.0。高周波ブレードが唸りをあげ、狙撃手の弾丸を真正面から切り裂く。
「そんなことできるのあんた!?」
「はルの前でリンゴを切るのが私の夢ですので。さぁジェネレータは傷つけないように!」
「あいあいさぁーーーー!」
狙撃手のヘッドモジュールに刃を突き立てる。躊躇いはない。
「そのまま動く!ばぶルガンで狙撃手を止め、周囲を索敵!」
「全部やってる!敵はパッと見いない、センサーはどう?」
「同じく見えません、撤退した模様ですね。決めたタイミングは4機撃墜したあたりでしょうか」
「ふぅーーー」
「戦闘終了です。よくやりました、はルーーーおっと失礼、メル」
「あら、マナー違反がうつったかしら」
「じゃかしいですよ」
「わはは」
動かなくなった狙撃手からエネルギーをいただき、キルモードをオフにする。
今回はなんとか生き残れたが、素人メンテの量産機といえど新型は新型だ。このまま性能があがり続けると、いつか本当に危ないかもしれない。
だが笑顔の彼女に水を差すような気がして、そんなことは言えなかった。
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