孤独の味

ぞーすい

第1話

 寝れない。

眠たくない。

そう感じる。

なぜか今日はいつもと違って寝ることができない。

別に明日何か楽しみなことがあるわけでもない。


「散歩でもするか…。」


外に出て道を歩く。

さっきまで暗いとこにいたからか,街灯の光が眩しい。

ほとんど無音に近い街を1人で歩く。

俺は白夜ビャクヤレンどこにでもいる普通の高校1年生だ。

母親はすでに他界しており,父親も海外出張中でたまにしか帰ってこない。

基本的に家には1人だ。

それが寂しいかと言われたら寂しいが,気にするほどの事でもない。

俺の生活は単純だ。

起きる。

学校に行く。

家に帰る。

寝る。

その繰り返し。

趣味もこれぞといったものがあるわけでもない。

正直にいって毎日が退屈だ。


「トイレ…。」


尿意を感じて近くの公園のトイレに行く。

用を済ませて,手を洗うときに考える。


『退屈…。』


退屈。

退屈。

退屈。

退屈。

退屈。


ふと鏡を見る。

そこにはなんの表情もない俺の顔があった。

この顔こそが学校で『孤高の白夜』と言われる主な原因である。


『こんなときに鏡に幽霊でも映ってたらな…。』


そう考えてしまう。

自分のバカな考えを首を振って振り払い,トイレから出ようと後ろを振り向く。


「こんにちはおねえさん。私に血を少し分けてくれませんか?」


ソレは唐突にして現れた。


『なんだ,いるじゃん。』


不思議と恐怖はなかった。

それよりも喜びに近い何かを感じ,俺の口角が少しだけ上がった。


「吸血鬼。」

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