ででーん!
五月といえばゴールデンウィーク。そして五月五日のこどもの日。あと端午の節句。
昔はよく立派なこいのぼりが揚げられていたのだが、今では都会だと大きのを上らせてる家は少なくなり、ミニサイイズのこいのぼりばかり。揚げてないとこも多い。子どもいないと意味無いし。
菖蒲湯に入るとかも今じゃあやってる家ほとんど無いんしないかな。スーパー銭湯とか、そういうとこならあるかもだけど。
五月人形の兜とか鎧は紙で作ったのとかを飾ってるみたい。まあそれもやってる家って少ないイメージ。
ちまきと柏餅はしっかり食べてるよね。毎年お菓子屋さんとかスーパーで見かける。
そんな子どもの成長とかを色々な形で祝う日であるが、栗原の誕生日でもある。
いつもは食べ物系を買っていたが、偶には形に残る物を渡してやったらどうだと湯車に言われたので、今年は食べ物以外を買う予定。
というわけで、誕生日プレゼントを買おうと思って家の近所の商店街を歩いていた。
なお、ゴールデンウィークもこどもの日も過ぎている。だって仕事が立て込んでたんだもの。
ガチの心霊スポットで行方不明になったのを探しに行ったりとか、呼ばれちゃったのを呼び戻しに行ったりとか、馬鹿やって祀られてるものを怒らせた阿呆を運んでったりとか、ぶち壊された祠直しに行ったりとか、他にも色々。
マジでなんか今年のゴールデンウィークはすごい忙しかった。大体いつもなら多くても五件くらいなんだけどなぁ。今年十件以上はあったぞ。
それも半分以上馬鹿やった奴の尻拭い的なのはっかりだった。バイトテロといい、迷惑系配信者といい、なんか変なの多くね?
そして炎上して消えていく。
「ありゃ、裏に入っちまったか」
目的の店がどこだったか忘れてしまいとりあえず適当な道で曲がってみたら、ちょっとシャッター閉まってる店が多い商店街から、薄暗くて色んなのがいる裏の方に入ってしまった。
すぐに出ようかと思ったが、人間が持ってても大丈夫な商品も売ってたりするので、せっかくだしとあちこち見て回る。
「お、そこの素敵なお嬢さん……お嬢さんでよろしい??」
「よろしいよー」
敷物の上に商品を並べている店主に声をかけられ、足を止めた。
うーん、どれも人間には贈れない商品ばっかだな。
「素敵なお嬢さん、うちの商品買ってかない?」
「人に害の無いやつ探してるからいらなーい」
「ええー。これとかおいしいよー」
「今誕プレ探してるからいーらない!」
「そっかー」
綺麗にお団子にされた誰かたちを指差されたが、そういうのは求めてないので強い意志で断った。
店主は少し残念そうに方を下げたが、すぐに別の客に声をかけていた。
にしてもあのお団子にされてた誰かたちの中に捜索願い出されてるのいたな。探してますってチラシ貼ってるのスーパーかなんかで見た。
口だけはみんな残ってるからずぅっと助けてって声上げてたけど、売り物があんなに煩くていいんだろうか?
それともああいうのを踊り食いするのが好きな物好きがいるんだろうか? 活きが良過ぎて喉に詰まりそうだけど。
それからも色々と露天や店を見て回ったが、誕プレにしても大丈夫そうなのが全然無かった。
んー、今回は完全にハズレ。どれもこれも人に贈るとダメなやつばっかりだ。
そろそろ出るかと考え始めた時、目の前にぱさりと赤い布が落ちてきた。
そしてででーん! と効果音が付きそうな勢いで、さらに上から兜を被り甲冑を着込んだテディベアが現れて布の上に着地する。
手にしたおもちゃの刀を掲げ、つぶらな瞳がドヤ! っと言わんばかりに輝く。
「……んー、見てる時に動かない?」
びょこんぴょこんと、小さく跳ねた。
「よく怖いのくっつけてくるけど平気そう?」
少し固まったが、大丈夫と頷く。
かなり震えていたが、大丈夫って言ってるし大丈夫か。
「じゃあ誕プレは君に決めたっと」
やったーと両手を上げるテディベアを抱き上げて裏から出た。
意外と良い拾い物をした。おもちゃの刀は彫刻刀にしようか。悪いのはそれで刺せばいいよ。
動けなくなるまで守ってやって。
栗原ってば図体ばかり大きくなったけど、中身はまだまだ小さいから。
というわけで、百均でリボンを買ってそれをテディベアの体に結んで栗原に誕プレよーと渡した。
その三日後。
『ねえ不動誕生日に貰ったあのテディベア夜になると動くんだけど!? なんか憑いてるよね!?』
「……あー、うーん、まあ悪いのじゃないからへーきへーき」
不動からテディベアが夜になるとちょいちょい動いているのだと電話が来た。
見てる時に動くなって言ったのに、普通に動きやがって。熊のくせに鳥頭め。
まあ見た目可愛いからすぐに馴染んだみたいだけど。そのままいい感じに守護霊ならぬ守護テディベアになってやってくれ。
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