本当のことだけを書いてやろうと考えた

 本当のことだけを書いてやろうと考えた。僕がこう考えて書き始めたというのも正に本当のことである。本当のことを書いた私小説やドキュメンタリーの類は古今東西五万とあるではないかなどと一笑に付されようことは百も承知である。それでもなお僕は声を大にして言いたい。本当のことだけを書く。自分のことを書いたと喧伝する私小説や史実に基づいたドキュメンタリーが幾らでもあるのは当然知っているがその殆どが嘘っぱちだ。自分に都合のいいことだけを見繕っておいてさもセンセーショナルの如きに振舞うのが「本当のこと」だとでもいうのか? たとい新人賞の下読みさんや選考委員の先生方が認めようとも僕は認めない。そんなものに興味はないのだ。リサーチだけで書かれた作品で賞をとってどうするというのか。フリーターやニートと呼ばれ蔑まれている僕の仲間たちよ! これは君たちのためにある小説だ。きっと本作品が君たちの手に渡らんことを切に願う。

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