第13話



1兄は、俺同様に狩が出来る奴認定された。

宴会用に、しこたま獲って来たからなぁ〜。


…何なら、商いをやっていると告白した時より、盛り上がっていた気がする。


俺も、毎日は家族の分しか狩らないからなぁ。


肉の手に入る窓口が増えるとでも、思ってんだろ多分。


ボス?


まあ、女はさ。


家の事さえ出来れば良いから。


日本でそんな事言ったら、ボコだけど。


異世界の家庭事情は大体そんな感じな価値観。


…ボスは家事、出来ないけど。


結婚してるし、夫がそれを許しているから良いんだよ。


…と言うか、1兄はボスにそんな事求めてないんだから、そんな一般論なんて関係ないんだけど。



———……何で、改めてこの話になったかって言うと。


1兄が今、絶賛モテ期中なんだよねー。


誰に?って言われたら、次村を出て行くであろう世代の女の子達に。


こう言う田舎村ってさぁ、“家事が出来ない女”は、女としての価値が低い訳。


ボスは見た目美人だけど、手先が不器用だからね。

幼い女の子の一部が活気付いちゃってさ〜〜。


命知らずだよね。


ボス自体は面白がってるから、1兄も未だ何もしてないけど。


実は結構ブチ切れてんのを俺だけが知っている。


いや、当然ボスも分かってるけど、それさえも面白がってんだよねぇ、あの人。


でもさぁ…やっぱり分かってないよねぇ…。

多分あれ、1兄が怒ってくれて嬉しいんだろうとは思うんだけどさ。


1兄って、むっつりって言うより……病んでるんだよなぁー。

一途歴が途方も無く、長すぎて。


今は両思いだし、1兄の感情表現が乏しいから、側から見て溺愛止まりなだけで。

結構皆、危ない橋を渡り中だと思うよ?


ボスにしろ、1兄にしろ、あの子達にしろ。



一応、この国の法制度としては、貴族でも無い限り一夫一妻。

略奪愛も法的には悪い事だし。


だから、親としては複雑そうだけど…止めないのは、いずれその子らが村を出て行くからだろうな。


イケメンで、狩が出来て、お金も持ってそうな1兄に、あわよくば。

とか、思っていそう。


俺の時とそう変わらん思考だよな。


…因みに、俺も未だ告られたりするけど。

俺は嫁、一筋なんで!!

即、お断りだよ。


…嫁の侮られポイントは顔らしいのだが。


前前世の俺系統の顔なんで、逆になんか安心するんだよなぁー。

あ、別にディスってる訳じゃないよ。

ナルシストでも無かったし。


まあ、好みって人それぞれですからね。

他人にケチ付けられた所でって言うね。







「ゼロ」


「今はアレンだよ、1兄」


まあ正直、どっちで呼ばれても良いんだけどね。

一応ね。


「そうだな、アレン。アズマをボス呼びはもう、止めておけ」


あ、そっち?


「お前、普段女をあんまり寄せ付けない癖に、ボスには親しげだから…勘違いする奴らがちょくちょく出てるぞ」


「げ」


それは青天の霹靂な真事実!

…いや、事実無根だけど!!

ボス呼びしている時点で、恋愛感情なんて、皆無だろ。

濡れ衣ぅっ!!



「じゃあ……かあちゃん?」



実は、前前世では1兄以外の全員が、かあちゃん呼びだったんだよな。

身内以外の前だけ、ボス呼びして取り繕ってただけで。


「…それはそれで、変な誤解が生まれるだろ」


だよねぇ〜〜。

だからこその、ボス呼びだったのにさぁー。


まあでも、俺も生まれ変わっちゃった訳だし。


郷には郷だし。


他人からは何を言われても気にしないけど……嫁に誤解されたく無いから、ボス呼びは止めとくかぁー…。


それに、1兄からの助言だからな。


自主的に他人に言いに来るのは、かなり珍しい事だしな。


「んー…じゃあ、今後はアズマさん?にしとくー。喋る時も、基本1兄通して喋るようにするわぁ〜〜」


情報、ありがと〜!………っと呑気に去っていく背中を見送っていると。


「残念だったねぇ〜、イチ」


と声が掛かった。


その愛しの女の声に即座に振り返る。


「あいつも、分かってるのか分かってないのか……いつも、のらりくらりと躱して行くよ」


アズマが、ゼロ…アレンの去った方へ視線をやったので、その視界を遮る様に立つ。


「ふふふ…私が、お前の狂気を解って無いなんて。あいつも言うようになったもんさねぇ…」


アズマにされるがままに、身体を委ねる。


「自分が動けないからって、あいつを動かそうなんてするんじゃ無いよ」


———…此処は、まさに。

ゼロが大事にしていた、以前のアジトそのままじゃないか。


勿論住んでる人も、建物も、全然以前とは似ても似つかないが。

守っている仕組みは、まんま一緒で…大切にしていることは、一目瞭然だった。


「恩もあるけど…あいつとは敵対しないよ」


生まれ変わっても…いや、以前の知識がある分、余計手強くなっているし。


それに


「女はねぇ…男が出て来た時点で、その女の負けになるのさ」


———そう言って獰猛に笑う自分の女に、心底惚れ惚れする。


「まあ、待ってな。直ぐに掌握してやるからさ」


の言葉に、“待て”が確定した瞬間だったが……不満なんて、無い。







———しかし、数日後……。


「姉御っ!」


と呼ばれて、アズマが皆に慕われる様になると、再び不貞腐れる男が居たとか居ないとか。





……因みに、拳で語り合った。










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