蛇足⑤ 人魚
「人魚は湖で生息しており水魔法が得意な種族だ。
基本は他の生物とは違い単体で自分にそっくりな子供を産むため、性別は女性しかいないっていう稀有な種族でもあるしね」
「あのーすいません。女神様
こんなにそれぞれの魔法の属性に特化した種族を生むことに何の意味があるんですか」
「住み分けや管理をしやすくするためだよ。
例えばなんだけど、君は三角鬼という遊びをご存じかな」
「いえ、存じ上げません」
「まず三つのグループに分かれるんだ。
分かりやすくグー、チョキ、パーとしましょう。
グーからしたらパーの人に追いかけられるがチョキを捕まえることはできる。
捕まえた人は牢獄に囚われていくみたいな感じでね。
でもねこのルールには致命的な欠点があり、ゲームに必要な争いが起きにくいんだ」
「その欠点とは何ですか?」
「グーは敵を頑張って捕まえれば捕まえるほどチョキを減らす、その場合パーを捕まえられるチョキがいなくなればグーは一方的にパーに捕まえられる逃走者になる。
したがって、自分たちが真剣に捕まえると自陣営が自滅することになり何もしない、つまり争わない方が得になるんだ」
「その歪な三すくみの均衡による平和を種族で再現しようとしたってことですか」
「ああ、氷、水、火の魔法も主に三すくみになっている。
これを利用して氷を扱える原初の獣人、水を扱える人魚、火を扱える竜人を作り上げた。
だけど、もともと現存していた人間の差別的な考え方や民族浄化、侵略戦争によって竜人や原初の獣人はほとんど滅ぼされた。
それにうまく同種族だけのグループで集まるだけでなく、異種族間でのパーティができたり、異種族で共栄をできているギルド連合国とかもあるしね。
結局、当初想定していたように種族を管理することは難しくなったね」
「特定の能力や魔法特化の種族が乱雑に増えて予期しないカオスな集まりができていく。むしろ重大な不安定要素になっていませんか」
「そうだね。世界の構造を、種の特性を変更して万人の幸せをコントロールするのはこんなにも難しいんだよ」
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