第28話 スタンピート
大きなイノシシの風貌のツインコーンが森から出ていき、作物を荒らしている。
「スタンピートが起きてる。早く退治しないと」
作物を育てていた獣人は束られないように必死で持っていた農具で攻撃する。
しかしその巨体に簡単に跳ね飛ばされている。
「それ見たことか、長年森に住んでいないから力が衰えているんだ!」
「何がスタンピートだ。森を破壊しつくしたからツインコーンの居場所がなくなっているんだろう!」
「そうだ!そうだ!」
森の方にいる獣人が一斉に叫んでる。
シノアが怒って言い返した。
「あんたら。同族が攻撃されているのに何言ってるんだ」
「自業自得だ。森に恩を仇で返したのだから天罰が下ったんだ」
今度は農業を行っていた獣人たちが一斉に叫びだした。
「お前らふざけるな!」
そこからは両者が木の棒や農具を武器として扱い原始的なケンカに発展していた。
といってもどちらも多くの傷を負っている。
ただのツインコーンのスタンピートが獣人同士の暴動に発展していた。
「カオスだなー。そして愚かだ」
サミエラがあざ笑うように言う。
どんどん作物を食い散らかされている。
こんな酷い情景の中で、一際美しい存在が居た。
気配はなかった。急に表れたとしか言えなかった。
「フェンリル様だ」
とても大きくて、白い毛並みが日光で眩しく照らされている。
その美しさに森の獣人も作物を育てる獣人も同じようにフェンリルを見ていた。
争いは止まった。
全ての獣人が次にフェンリルが何をするかを注目している。
次の瞬間フェンリルはものすごい速さで移動し、作物を漁っていたツインコーンを噛み殺して捕食し始めた。
「フェンリル様、裁きは帝国に寝返ったあの獣人どもにしてください」
「乱してるのはツインコーンだ」
「森を壊しているのは帝国に従っているあの獣人たちです!」
「人や獣人もまた自然の産物だ。彼らの発展もまた自然の発展だ。
時代は変わったのだ」
「なんでこんな!ふざけ…」
彼ら森の獣人たちの目の前に岩の杭が出てきた。
それも壁を作るように。
「そこまでだ。これ以上帝国臣民たちに危害を加えるなら残念ながらお前たちを殺さなければならなくなる」
彼らは悔しそうに森を帰っていった。後に残ったのは傷ついた獣人たちとツインコーンの死体、荒らされた田畑。
たった一瞬の出来事ではあるが、この地域で争いの火種がくすぶっているのが分かった。
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