蛇足話③ 吸血鬼と悪魔
目の前には魔王軍として活躍していたデーモンがいる。
「会えるとは思ってなかったよ。
なにせ第四次人魔戦争で殉職したと知らされていたからね」
「吸血鬼といったな?魔族という認識であっているのか」
「ああ、そうだよ。だから裏切り者の君をここで殺さなければならない」
「ずいぶんと辛らつだな。
俺は魔王軍に見捨てられても、ここで命令通り人を相手に殺してきた。
そんな忠犬を殺すのか。筋違いだと思わぬか」
「儀弁だよねそれは。ただ死にたくないから人間の家畜になり下がっただけでしょ。
君のせいで多くの名のある冒険者がこの地で育成され、バジリスクの石化で生成された魔石は人類の発展に使われている。
火の魔石は鍛冶屋で武器や道具を錬成するために使われていることを確認している。
影ながら人類に貢献している立派な反逆行為だ」
「ずいぶんと偉そうだな。仮にも前線でたくさんの人を殺してきた。魔族の中でもかなり有名だと自負しているが」
「私はシャイだからね。直接殺すようなことは滅多にしない。
私に噛まれた者は血を求めて狂暴化する。俗に言うグール病と呼ばれるものだよ。
ほら、第四次人魔戦争の時も君が侵略しやすいように事前に疫病をはやらせることで弱体化させていたんだよ。
おかげで君も奥深く侵攻できただろう?
私が陰で舞台を整えてやったんだ。感謝してほしいものだけどね」
しゃべっている最中にデーモンは複数体に分裂し、全ての個体が私めがけてファイアボールを放った。
「まだ話している最中じゃないか」
歯で少し指を噛み、落ちた血が地面の水分と混ぜ合わせる。ここは天井から水がしたたり落ちる洞窟となっており、水は豊富だ。
そうしてできた血の混ざった水分で壁上に自分を覆い攻撃を防いだ。
「ただ引きこもって人を楽に殺してきただけじゃなさそうだな」
「それはこの洞窟の最下層に来た時点で予想できたんじゃない?」
さっきまで血でできた壁が槍状に変化して、複数いるデーモンの体に飛ばす。
「どれだけ攻撃しても無駄だよ。回復するだけだ」
「なら魔力を尽きて再生不能になるまで、殺しつくすだけだ」
サミエラが動かす血の水の量が大きくなっている。
一滴たらしただけの雫がこの湿った洞窟内にある水分と混ざり合い操作する量が膨大になっている。
「これだけの力があるなら、ジョセーヌやランドールをいつでも殺せただろう?」
「あまり直接私が干渉するのはよくないんだよ、それに物事には順序があるからね。おしゃべりは終わりだ」
うごめく血でできた槍による波状攻撃を仕掛けている。
デーモンは何度も分裂を繰り返すが、粉々になるくらいの攻撃をずっと仕掛けている。
「バジリスク、お前の石化の能力で何とかならないのか」
「私はこの戦いに参加するつもりはない。
それに石化は私の膨大な魔力で相手の魔力を強制的に石に変化させる干渉魔法だ。
だから奴には無効だ」
「あいつの方が魔力が上?四大古龍のバジリスクよりもだと!」
一匹になってしまった。そして喉をやられた。もうしゃべることもできない。
必死に逃亡と分裂を繰り返すがダメージ量が回復を上回っている。
ついには体が動かない程になってしまった。
「私は君にも怒っているんだよ、バジリスク。
元々は生み出された魔族の中でも、自己分裂と回復力が深刻な影響を及ぼすほどの悪魔を作っちゃったんだから、魔王とも協議して君の力を用いて楽に殺処分するはずだったじゃないか」
どういうことだ?魔王が俺を助けなかったのは単に魔王軍の余裕がなかったからじゃなかったのか。
「人の発展になると思い利用したまでだ」
「君は自然をつかさどる龍だろう?
過度に直接的に人に協力するのは禁止されているだろう」
「君だって疫病をつかさどるだけのはずなのに、魔王の仕事を肩代わりしているだろう」
「まあいいや、ここで君とやり合うのは得策じゃないしね」
どういうことなんだ。話している内容もまるで分らない。
ここでおらは終わってしまうのかなにも理解できぬまま、何もできずに中途半端な状態で。
「さあ、死のうか」
これが最後と言わんばかりに大量の血の槍の攻撃を仕掛けられ、ついに意識が途絶えた。
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