第16話 ガーゴイル

「まったくギルドの連中のやつ。

全然融通が利かないところ他の国の公務員とかと変わらないんじゃない。

なんかさー、冒険者が緊急事態が起きているって言ったら臨機応変にじゃあ緊急クエストを発動使用みたいな感じでスピーディに動けないもんかね」


「たった数人だけの意見では全体を把握する情報としては不完全だからじゃないですか」

「まあそうだけどさー。

そういや基本の4属性の鉱石があるっていう話が興味深かったよね。

そんなもの魔族の領地にはないし」


「だた何も考えずに魔力を注入するだけで4属性に変化する。

魔法は基本魔力を現象に変換し、攻撃に使うならそれを魔力を使って飛ばす。

現象に変化する部分を少し魔力を出すだけで魔石が行える。こんなに画期的なものはないよ」


「俺も魔法は全く使えないのに手をかざしたら、少しだけ変化しました。

魔力がほとんどなくてもほんの少しあるだけで変化させられるので汎用性が高いですよね」


「ああ、火を起こす鉱石の砂は矢に盛って火の矢を相手に打つことや水辺より遠く離れた場所でも小さな容積で水の鉱石から水が取り出せる。

結構便利だけれど、ギルド連合国でしか扱われていない。

他の国では全然普及してないんだね」


「君たちはこれからその鉱石がどうとれているか少なくとも調査してもらいたい」

 また例の黒蛇ニョロが突然姿を現した。

「それが終わるまではこの国を出るな。以上だ」

 またすぐ消えていなくなった。


「相変わらず用件だけ言っていなくなる。面白みのないやつだ。

どうやらまだ私たちはここでやらなければならないことがあるようだ」

「1階層はチームで挑めば死傷者がまず出ない魔物。

2階層は前回オークやファイア・ウルフと戦ったところですね。本来ファイア・ウルフが生息しているのは4階層です。

ちなみに太古の巣窟で到達できた階層は8階層までです」

「とにかく奥まで行きたいね」

 


 今回はシャミ―ニア、バン、サミエラ、ランそして前に一緒に戦ったジョセーヌ、グルグ、シズクの7人でギルドに来ていた。

「ようこそおいでなさいました。今回も何か依頼をお受けしますか」

「ああ。できれば太古の巣窟の深いところの依頼がいいんだが」 


「そうですか。しかし、深いほど危険度が高くなります。あなたたちはまだ新米です。ギルド証10級の冒険者は1階層から2階層までが妥当です。

冒険者が太古の巣窟に立ち入りできるのは依頼を受けた時のみです。

まあ、信頼を得られたものはギルドがら調査隊員と呼ばれ自由に出入りできるようになりますが。

具体的にはギルド証2級以上は必要ですね」

「それならジョセーヌは持っているんじゃない?」


 ジョセーヌは私たちを見て難色を示していた。

「私は2級だがこのチームの実力で行けるのはせいぜい3階層までだ。

できれば実力にあったところで経験を積まないか」

「じゃあ三階層の依頼のガーゴイルの討伐はいかかでしょう?」

「うん、それにしよっか」


 3階層まできていた。

今のところ誰もダメージを受けていない順調そのものだ。

「ガーゴイルってそもそもなんなんですか?」

 私の問いにジョセーヌが答えてくれた。


「3階層は昔要塞内で魔族が本格的な防衛を始めた個所でね。

守備隊のようなものだよ。姿は悪魔の形をしている石像だね。

ただ動きはするし攻撃も仕掛けてくる。

ちなみにここを防衛していた魔族は悪魔のデーモン。

奴には厄介な魔法があってね。かなりの再生能力がある。死んでも復活するんだよ。

どんなにバラバラにされても再生して復活するんだよ。

ちなみにそのデーモンがガーゴイルのモデルらしいよ。

自分自身をモデルにしてるなんてさすがは魔族、ナルシストで自己中心的だね」


「あはは、すごいですね。

でも死んでもよみがえるならどうやって倒したんですか」

「…聖女マリの神聖な力で倒せたんだよ」

「へえ、そうなんですね」

 話しているうちに地面は石の床のみちになっていて、左右にガーゴイルが石の椅子に乗った状態で道なりにずっと並んでいた。

「近づくと動き出すようになっているから準備はいい?」

 全員頷いた。


 接近するとガーゴイルたちが動き出した。

翼を動かして飛びながら攻撃を仕掛けている。

だが動きはとてものろかった。

前衛にいたバンとサミエラが剣を振り回すだけで大方倒せていた。


 そろそろ事前の打ち合わせ通りだ。

ガーゴイルの群れにあわせて、お馴染みのポイズンバットの大群が現れた。

「魔物が多くなったわ。ソラ(シャミ―ニア)混合魔法と干渉魔法の準備お願いしていい?」

「いいよ」

ランが風魔法を起こそうとしている。そこに干渉し狙いを魔物たちの群れの方向にするように見せかけて下の地面の方にあわせる。

「バースト」

ランが言ったのを合図に火魔法を組み合わせる。

爆発は自分たちの手前10m付近で起こった。

「きゃあー落ちる!」

後衛にいた私、ラン、グルグ、シズクが地面に空いた穴に落ちた。

ジョセーヌは風魔法を用いて空中で浮いている。

 

「子供たちが下の層に落ちた。救援に行く」

「ちょっと待ってよ。

ジョセーヌ、ハンス(バン)がポイズンバットにやられてけがをしている解毒したり治すのに時間がかかるから応援頼めない?

下の層に落ちなかった私たち三人の前にはガーゴイルとポイズンバットの群れがいる。こいつらをどうにかしないと私たちの安全すら脅かされかねない」


「わかった。

こいつらを倒した後で必ずあの子たちを迎えに行こう」

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