夢から覚めて その3
「どうするのこれから?」
「ソージ君の回復を待ってからしかこちらからは動けんか。」
こうなった以上は人類は再びユメと戦うしかない。
ユメの行く手を阻む者がいた。
ガッと足を壁に掛けユメの道を塞ぐ。
「待ちな。」
「……。」
「こんな形でお前とやり合うことになるとは思わなかったぜユメ?」
「ミーユか?」
「へー、覚えててくれてたんだね。」
ミーユは嬉しそうにユメの後ろに回りユメの髪の毛をいじりながら言葉を続ける。
「ユメ姉さん。あん時の恨み晴らさせてもらうよ?」
「お前に何ができる?」
ミーユはポケットからスタンガンを取り出しユメの背中に押し当てる。
ビリっとユメの全身に電流が走るとユメはそのまま気絶する。
これは夢である。
「進入者発見。進入者発見。」
「異常事態発生。宇宙犯罪者がスターシップに乗り込んだとの事。」
「ただちに進入者を捕らえよ。」
「おっとここからは俺の夢にさせてもらう。」
ミーユの夢授与が始まる。
ミーユの夢にどんどん浸食されていくユメの世界。
楽しいはずの宇宙旅行が招かざる客により暗躍の宇宙旅行へと姿を変えていく。
「これは?」
ユメは苦しむ。
「ソージ兄さん助けて。」
「ソージは来ないぜこれは俺の夢だ。すでに殺されたというシナリオだ。」
尚もミーユの夢の授与は続く。
これは現実である。
その映像はスクリーンを通して研究室いにいるユート達が見ていた。
「夢授与の能力がここまでとは。」
「ソージさんが回復する前に決着がつくんじゃ?」
ユートとマイコは息を飲む。
実は10分ほど前に研究室にユメは連れ戻されていた。
そしてミーユの夢授与が行われていたのだ。
夢の世界に戻そう。
「入ってくる。夢がいらない夢が私の世界に入ってくる。」
ユメは苦しみ悶えている様子。
現実のユメにもその影響が出ている。
悲痛のうめき声が研究室中にこだまする。
現実の世界でソージの治療が終わりを迎えた頃だった。
ガバっといきなりユメが目を覚ます。
「はあはあ。」
ユメはまだボーとしている様子。
だが息づかいは荒い。
そうとうに苦しんだのであろう。
「許さない。お前たち絶対に殺してやるからな。」
不幸にするとかもうどうでもよくなりユメは殺意だけがふつふつと沸き上がる。
「ようやく本性を表したねユメ。」
ソージが足を引きずりヨタヨタしながらユメの方にゆっくりと足を進める。
「長かったけどようやくユメを幸せにできるかもしれない。」
ソージ、二十一歳の春の出来事である。
ユメは十八歳にになっていた。
「宇宙に行こう。二人で。」
「は?何言ってるの?」
ソージの意識はもうろうとしていた。
「ユメを幸せにするって三年前からの誓い覚えているんだ。」
ソージの息は荒く冷や汗を流しながら苦しそうに語る。
「ユメわかってくれ。お前はもう一人で苦しまなくていい。たとえ人類全員がお前を敵に回しても僕は君を救ってやる。」
ソージはそのまま地面に倒れ込んだ。
研究室に不気味な空気が流れ込む。
緊迫した状況下でミーユだけは嬉しそうに笑っていた。
「いいね。この緊張感。今から人類の敵を倒そうとする緊迫感。」
ミーユは異常である。
自分が悪人と定めた者は決して許さない。
「死ねよ。」
ミーユはナイフでユメの腹部を刺した。
ドクドクと滴り落ちる血。
ユメは足を引きずりながらミーユに近寄る。
「お前こんなことしてただですむとおもうな?」
ユメはソージの横に倒れた。
「大事なサンプルが…ナンバー01を緊急に手当しろ。」
ジロウはユメを能力者の研究サンプルにしていたためユメを治療室に連れいくように指示する。
ユートとマイコはソージの様子が気になっていた。
「大丈夫かなソージさん。」
「ここで死ぬようなヤワな男じゃないのは確かだ。」
ソージもタンカーで運ばれユメと同じ治療室へ連れて枯れた。
「俺たちもいこう。」
「うん。」
ユートとマイコも治療室に向かった。
「ミーユお前はなんて事をしでかしてくれたんだ?」
「ふん、人類の敵を殺そうとしたまでのことだ。」
ジロウは大事なサンプルを失いたくないために今まで殺さずにユメを生かしておいたのだ。
「ミーユお前はこの研究所から追放する。」
「いいのか?」
「ああ、用済みだよ。」
ジロウはピストルを構えた。
「あはは、いいねぇ。好きだよそういうの。」
「何がおかしい?」
「殺しがいがあるって事だよ。」
ミーユもピストルを所持していた。
互いにピストルを向けあうミーユとジロウ。
その頃治療室の前のソファーに腰掛けてソージとユメの回復を祈るユートとマイコはミーユの事を疑問に思っていた。
「夢授与って本当に自分の夢をただ他人の夢に進入するだけか?」
「それウチも思ってました。」
「とてつもなくイヤな予感がする。」
一方で研究室ではジロウが苦しみもだいていた。
「うががが…貴様何をした?」
「夢授与の真の力だよ。苦しいだろう起きて見る夢は?」
「うあああ、来るな。やめてくれ。」
ジロウが見ているは無数のクモのビジョン。
「そういえばあんたクモが苦手だったよな?」
ミーユがクスとわらい続ける。
「起きて見る夢。すなわち幻覚。幻覚を見せることが夢授与の真の力。」
「助けて助けてくれ。」
ジロウは幻覚のクモを振り払おうとする。
「さて、この力どこまであの女に通用するかな?」
ミーユの笑い声が研究室の中に怪しく響きわたる。
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