夢から覚めて その1

これは現実ではない夢である。

 

 月でのキス…そんなロマンチックなキスが出来るなんて素敵だと思いませんか?

新暦2124年…月に人類が降り立ったのは今は昔。

今、月は恋を成就するためのパワースポット的な衛星になっている。月には観光ホテルがそびえ立ち観光地として大人気を博していた。

 17歳の現役女子高生、ユメはしっかり者だが不良娘のところが玉にキズ。そんなユメは幼い頃より地球から三百光年離れたコロニー20で生まれ育った。

 そんな彼女はこの旅で今付き合っている彼氏ともっと仲良くなるために月へと恋の祈願をしに行く。旅のお供にお兄さん的存在のソージも同行する。

 二人は、月経由・地球行き宇宙船スターシップ号へと乗り込む。予約していた部屋に入るなりユメはベッドに飛び乗り寝っころがり一息つく。

「ユメ、僕は隣の部屋にいるから、何かあったら僕のタブレット携帯にメールしてくれ。」

「ソージさんてばあたしを子供扱いして…もう、あたし子供じゃないんだからね。」

「子供扱いしてるわけじゃないよ心配なんだ。」

「ふーん、まあ、いいや何かあったらメールするよ。じゃあね。」

ユメはソージをじっとりとした目で見る。

 ソージがユメの部屋を後にするなり、ユメは隠し持ってきたビールをあおる。

「ふう、最高だわ。」

 その時、部屋のドアをノックする者が。ユメは慌ててビールを机の引き出しに隠し恐る恐るドアを開けた。

「コラ、不用心に部屋のドアを簡単に開けるなっていったろ。ここはもう船内だ中には柄の悪い奴もいるんだからな。」

「わかってるわよ。わざわざそれを確認しにきたの?」

「いや、お酒を没収しにきた隠し持ってたのバレバレだぞ。」

「残念、もう飲んだわよ。」

「残りの物を没収だ。なんたって2週間の長旅だからな。2週間分もってきてるだろ?」

「もう、ソージのバカ。持ってくといいわ。」

 ユメは何本かビールをショージに渡した。

「ねえ、パパたちのは内緒にしててよ?」

「今後の行いしだいだな。」

 ソージはお酒を没収して自分の部屋に戻っていった。ユメは引き出しに隠したビールを飲み干し缶を壁に投げつけ少しキレる。

「もう、なんなのさソージのやつ…あーあー、つまんなくなっちゃったな。」

また、部屋のドアをノックする音が聞こえた。

「なんなのよ。もう、お酒はないってば。」

 しかし、ソージではなかった。

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