第28話 きみひこ
きみひこ、5歳 最近正雄の所に現れる霊の名前である。
子供の霊だ。
「お兄ちゃん来たよ」
「お~う、きみひこ、来たかぁ」
「なにしてあそぶぅ?」
「今日は一緒にⅮⅤⅮ見ようか」
「でぃ~ぶいでぃ?」
「アニメのヤツ借りて来たから」
「えいが?ねぇ、えいが?」
「そう、映画やでぇ」
「やった~、えいが、えいが~」
きみひこが家に迷い込んで来たのは2週間ほど前の事である。
お母さん、お母さんと泣いて居た。
正雄が何を話しかけても泣いて居たのだが、そこは子供である、すぐに正雄になついてしまった。
そこからは毎日の様に遊びに来る様になった。
正雄には子供は居ないが、これくらいの子供が居てもおかしくない歳である。
霊達の時間と人間たちの世界での時間は違う。
きみひこがいったいどれだけの時間を彷徨って居るのか正雄には分らない。
きみひこに聴いても分らない、自分が死んだ事すら理解出来ないはずだ。
両親に逢いたいと言う執着が、この世を彷徨わせて成仏出来ない理由なのだろうが、子供なら当たり前であろう。
もし、神様が本当に居るのならば、何という酷な事をするのだろう。
そこに意味があるのだろうか、直接聴いて見たいものだ。
罪のない子供の霊は本当に可哀そうである。
「きみひこ、死ぬって事わかるか?」
「死んじゃうのでしょ、わかるよ」
「きみひこは今、死んでいる?」
「いきているよぉ~、ほら、手も足もうごくよぉ、ほらぁ」
きみひこは、両手足をヒラヒラとさせた。
「きみひこ、魂ってわかるか?」
「たまし~?」
俺は5歳の子供を捕まえていったい何を質問しているのだろうか、解る訳が無いのに。
しかし、どうにか分らせてあげたい。
理解させてあげたい、成仏させてあげたいのだ。
心に語り掛ける事が出来れば、きっと言葉なんか要らない。
正雄は明日、太刀原霊山に電話を掛ける事に決めた。
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