淀んで見える変わらない景色
私は21歳の時に入社した。
お給料も
朝5時に起床し、顔を洗い、仕事の準備して
始発のバスに乗り20分程度の職場へ向かい
搬入された物に間違いが無いかを確認後、在庫をパソコンで入力、本部へ連絡し報告。
その後、任された業務をひたすら定時まで行う。
働く者からすれば極めて当たり前の事だが
同じ事を繰り返す毎日の中に娯楽なんて無いに等しくて、どこにも行き場がなく息が詰まっていた。
だから… ではないけど
毎年、違う顔を見せ「今年もよろしくね」と 元気に挨拶してくる者に対して、
八つ当たりにも似た行き場のない感情を発散し
愚痴を溢すように『 またかよ 』 なんて意見を繰り返した。
それでもこの者たちは何食わぬ顔して
毎年、毎年、変化しながらもやってくる。
恐らくこの者たちは、この世に生まれてから終わりを告げる時まで全ての生き物達が共に過ごすのだろう。
きっとどんなに時が経とうがその事実は変わらない筈だ。
そう、変わらないんだ。
どんなに嫌気がさしたところで、我々生き物達は
この者たちがいなければ風土を感じられないどころか、食べ物や飲み物さえ与えられないのだから
感謝している人も多いだろう
共存と何ら変わりない。…変わりないが
私にとってはとてつもなく腹正しく思う時期もある
それは、いわば
その強者たちは、元気よく照りつけ眩しさ全開でムシムシと身体にまとわりつく
元気がなくぶっきらぼうにゆっくりと照らす日差しと冷たい空気で頬を赤らめる
この季節だけはどうにも
自分を奮い立たせるのが 億劫で 「今日もか…」なんて呟きが 空中に舞うほどイライラが募る。
大抵は待ち遠しくあるが私は非常に苦手だ。
どんなに対策を練ったところで環境に良くない物を
使わないと過ごせなくなってきているのが原因なのかもしれないけど。
子供の頃はもう少し、手加減した気候でいてくれたのに。
それに最近は『え?忘れちゃった?』と問いたくなるほど
儚い花が咲く季節と、葉が紅く色づく季節が一瞬のように思える。
これを他人に言っても「え、そう?…」と切り捨てられるのがオチ。
私の感じ方なのだろうか?
特に去年は今までに経験した事が無い気だるさがつきまとった。
常にドッッと疲労感が耐えず、誰かに押さえ付けられてる様な重みが肩にズシッッと乗り、踏み込む1歩がしんどかった。
足取りが悪いまま、変わりばえしない道を歩き
地にしっかり足をつけ立っている街路樹や公園や
いつも見なれた
まるで私を見ているかのようだった。
気を引き締めなきゃいけない職場では
毎日顔合わせる上司や先輩方に
まるで巷を賑わせてる有名な演技派女優の様に
ドラマや映画などで活躍出来るんじゃないかってくらい偽りの自分を演じて愛想を振りまいていた。
でも、今思えばそんなのは愛想でも愛嬌でもなくて
ただ、ただ、外面が良いだけで人望の無い人間に過ぎない。所謂、八方美人って奴だ。
家に帰れば魂が抜けたかのように
空気に舞い消えていくため息を吐き
本当の自分が分からなくなっていた。
大人になってやっと出来た友達ですら
働けば働くほど減っていきいつの間にか居なくなってた。
『 土日祝日や平日も働く私 』 と、
『 土日祝日が休みの友達 』とじゃ
当然、予定なんて合うはずなく連絡も遠のいた。
今の時代は、私が幼少の頃より便利な世の中になり
情報がすぐに入る。
家族のみならず知ってる人も知らない人達のことさえ。
特にどんなコンテンツよりも最も目に入りやすいのが SNS “ ソーシャルネットワーキングサービス ” だ。
休日に旅行を楽しんでいる様子や日常生活での出来事など 多種多様に投稿されており、私は友達の投稿に ‘’ いいね ” を押す人さし指が躊躇うほど、羨ましくて仕方がなかった。というか...
したい事をして楽しんでいる友達が羨ましかったのかもしれない。
こんな毎日で唯一自分が安心できる母と姉と暮らす家さえも、寝に帰るだけで言わばただの箱になっていて家族 とも会話がなく挨拶するだけだった。
恐らく私が醸し出していた真っ黒に滲む雰囲気を察して、母も姉も話しかけなかったんだろう。
その様子を客観的に見た時、湿った空気に包まれ
風通しがよくないことが分かる。
でも…
正直、周りとの差を感じ不安で焦り
自分に苛立っていた。
どんどん 自分だけが取り残されそうで…。
だから
少しでも虚栄を張り、壁を作り距離を置いた。
そうしてないと心を保てなかった。
何も持っていないから。… 武器を。
私の最終学歴は中卒。
高校卒業が当たり前で大学卒業してても就職先が見つかりずらい、中卒なんて尚更難しい世の中で
資格を持っていないと仕事が限られる。
高校には入学したが行きたくなくて通わずずーっとバイトをしていた。
学校でクラスメイトや先輩、後輩、教師と関わるより、バイトをして職場で出会う人達から沢山学べて気が楽だった。
そんな私は高校を退学。(になっていた)
ぶっちゃけいつ退学したのか自分でも分からない。
だらしがないというか、本当に自堕落というかバカにされても可笑しくないなと心の底から思う。
だけど、この頃は青くて無敵で思ったままの行動と
何とかなる精神で生きていた。
寧ろそう生きざるを得なかった。
私が幼少の頃に両親が離婚。
母に引き取られ頑張って働いたお金の一部を
母に渡し、残ったお金で好きなアイドルに使ったり
自分が欲しい物を買ったりと自由に過ごしすぎた結果、私は資格を取ろうなんて考えもしなかった。
まだ ‘’ 若い ” からと何も考えず
ただただ、その場しのぎ。
今になってそんな自分に後悔する。
世間一般では、私のような人間を
‘’ どうしようもない ” だとか、
‘’ 堕落してる ” だとか、
‘’ 落ちこぼれ ” だとか、‘’ 終わってる ” と口に出して言うんだろう。
だけど自分の事を素直に打ち明けられなかった。
友達にも、そして職場にも。
周りが経験した事の多くを私は経験しなかったから大人になった時に何も話せず
トイレに行き逃げたり、作業をして聞いてないフリをしたりして、耳に蓋をして塞いだ。
だけど現実逃避な自分の自業自得である。
そしてまともに歩んで来てないから
年齢と共に大人としての責任を任せられる事に
いつまでも自信が持てず、周りを引っ張る力さえなかった。
今まで続ける事をしなかった私は、
立派な大人になんてなれるはずもなく
いつまでも子供のままで成長しない
ただの『思考停止 人間』 。
だけどそれも…
「…自分が悪いんだよ。」と、自分に言い聞かせるように呟く。
自分が先のことを見据えずに行動してきた
そのツケが回ってきたんだ。
同じ日々の繰り返しでもどんなに忙しない毎日でも
それが『大人なんだ』という事に私は気付くのが遅すぎた。
何も考えず過ごせる時間はあっという間に過ぎていく。好きな事をいつまでもできる年齢は短い。
だから大人はストレス社会の荒波に飲み込まれるのだろう。
これだけネガティヴで卑屈な寂しい心がある反面、
開き直って醜い事を考える自分もいる。
だって、、
《いつまでも子供でいられない》のは確かで頷けるが、幼児の頃に胸がときめく程、好きな事でも体験や経験できず大人になってからそれらを叶える事について批判的な意見を言う者達がちらほらといる。
その者達に対して首を傾げてしまうんだ。
実にめんどくさいなと遠目から自分でも思うし
定職に就いていない私がこんな事言えるタチではないのは承知の上だけど
私が言ってるのは、心。...気持ちの事。
子供心があるのは恥ずかしいと思わない。
私は現に中身は子供のまま成長してしまっている。
「25歳にもなって」とか「もういい大人が」とかよく聞くが
25歳のいい大人でも好きな事はしたいんじゃないのか?
好きな事をして生きている者に対して「いつまでそんな事をしてるんだ!恥ずかしくないのか!」と
言ってやったぜ!なんて言わんばかりの考えを主張し口角を上げ責めてくるような人に対して寧ろ
睨みつけたくなる。
「逆にあなたが恥ずかしくない?」と。
だって、
好きな事をする = 自由を手に入れてる
自由を手に入れてる = 人生を謳歌している
そう思うから。
だから、
私は全然、恥ずかしいと思わないよ。
《 恥ずかしいと思う方が恥ずかしいんだ。》
例えば、
会社勤めで毎日ヘトヘトな人でも
お酒が “ 好き ” だからお酒を買って飲む人もいるし
ツナマヨのおにぎりが“ 好き ”だから
ツナマヨを買う人もいる。
キラキラしてぷっくりしたデザインのネイルが好きな人もいるだろうし
みんなそれぞれ好きな“ナニカ”を手に入れたりして過ごしている。
好きな事を選ぶために時間も物も買っただけ。
それの何がいけないことなのだろうか。
違うことなのだろうか?
訳が違うのか。私の思想とは。
でもやりたい事やしたい事、好きな事に
年齢って関係あるのか?
「なんてね..こんな事長々と考えてる私が1番、厄介者だな...」
こんな感じで小学生のおチビちゃん並みの思考で開き直り
いつも心の中で呟いている。
表には出さないが心の中では
善と悪が彷徨い、繰り返しながら過ごしてきた。
こんな奴だから人間関係が苦手にもなるし
『継続は力なり』を、理解出来なかったんだろう。
恐らく私は、屁理屈なんだ。
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