伝わる思ってもない言葉

-『あのさ、せめて昨日言ってほしかったんだけど。

今日締め日なの分かってるよね?』


「申し訳ございません。昨日さくじつには決心がついておりました。ただ土日でお忙しいだろうと思い、本日お電話させて頂きました。」


-『そっか。ただ、今後辞めてどうするの?』


「今後につきましてはまだ未定ですが、明日以降に面接が入っておりますので。


今後は自分に合った仕事をしたいと思います。」


-『そう。でもね、突然言われても本当に困るなぁ。

代わりのバイトも見つけてないんだよね?

他の従業員に迷惑が掛かる事を考慮した?』


「本当に申し訳ございません。提出したシフトまでは働くつもりでいましたがパートさん、学生バイトの皆さんと店長にこれ以上迷惑を掛けたくないので。」


-『正直、奈央ちゃんはフルで働いてくれているし、頼りたいんだよね。


だけど、まぁ…

奈央ちゃんがもう限界と言うならべt…』


「はい、もう限界です。働けません。」


早く終わらせたい、その一心で相手の言葉を遮って自分の言葉で簡潔に伝えた。



だって… ‘’辞めて欲しい”



なんて心の声が漏れ出てるのが電話越しでも伝わってる。


『自己都合退職』に繋がる “辞めさせて下さい” の一言と

『退職する』 その時を待っていたかの様に。


長ったらしく私に向けられた言葉達は

所詮、偽善だ。

退職後のトラブルを避けたいのは両者共に同じ

後になって恨まれるような事は誰だって嫌だろう


それにしても

辞めると伝えた私を社交辞令で引き止め

『辞めてほしいなんて思ってないよ』と見かけだけ装いつつ内心、喜んでるのが見え見えすぎる。


『だけど、まぁ』 の辺りが特に。


今の店長に変わって数日、前任の店長やパートさん、バイトの子達などなど…

何を話したか分からないが、馬が合わなかったのは確かだ。


作り笑顔を浮かべ親近感を持たせる様な口調も

私には全てが嘘っぱちに見えた。

それに周りのパートさんやバイトの子達の雰囲気もね…。


元々辞めたいと日頃から言っていたからどうでも良いけどね。


つらつらとお世辞の様な言葉を並べる店長を遮り

イライラが込み上げてくるのを我慢しつつ


核心の言葉を伝えた。

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