1-10【修学旅行①】(2)

あかねたちと別れて、わたしと承太郎じょうたろうくんは砂浜のベンチに座っていた。


「ごめん付き合わせて・・・」


「別に買い物とか興味ねーから」


しばらく二人でぼ~と海を眺めていた。




「なんか思い出すね・・・」


わたしはぼーっとしたままそう言った 



「はぁ?何をだ?・・・」


「はっ?なんだろ?・・・なんか口が勝手に!!」


わたしは急に我に返った。



何故かわたしは下を向いて考えこんだ



「ん?どうした?気分悪いのか?」



「ちがう。なんか思い出さなくちゃいけないことがある気がする・・・」



「なんだ?お土産リストでも忘れたか?」



「ちがうっ!もっと大切なもの・・・」




「旅行に来てお土産より大切なものってなんだよ!」



「ちょっと、お土産ってそんなに大切?」



「大切だろ!一つでも足りないと喧嘩になるぞ」



「ちょっと、なにそれ~」


なんかおかしくて思わず笑っていまった。



「何ウケてんだよっ!


毎回兄貴に文句いわれんだよ。」 



わたしは笑いながら


「へ~承太郎じょうたろうくん お兄さんいるんだ」 



そのとき目の前に綺麗な夕日が現れた。



「ちょっとみてあれ!」


わたしは思わず砂浜を海に向かって走った。



砂浜を歩きなれてないわたしは爪先が砂に埋まって転んだ。


「おい大丈夫か?」


承太郎じょうたろうくんがつかさずかけより手をとってくれた。



口は悪いけどこういうところは素敵だと思う。


具合が悪いわたしに付き合ってくれてるし  

この間地震の時もかばってくれたし 

思い出して、顔が少し赤くなった。 



「ありがとう」


と顔をあげると、忘れていたものを

思い出したような

突然不思議な感覚に襲われた。



そして何故か彼越しに見える夕日が

とても切なく、苦しくて、


そして目の前にいる人が

とてもいとおしいくて



わたしは承太郎じょうたろうくんを見つめたまま

涙があふれでて止められなかった。



「おいどうした!」



頭はその状況を描写できるくらい冷静で、

だけど心には涙を止められないほどの後悔と罪悪感が混ざった

複雑な感情が込み上げていた。



わたしたちはしばらく見つめ合っていると 

承太郎じょうたろうくんの表情が変わった 


承太郎じょうたろうくんはわたしが思い出せなかった何かを思い出したようだった。



そして彼はわたしの頬に手を添えて

やさしくキスをした。



そこからわたしの意識は途切れ

気づいたのは翌朝だった。

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