【オマケ】妖精の一口分
本編完結後のオマケです。
***************************
今日も庭を訪れた主は、庭園に用意された白いテーブルセットにティーカップと茶菓子の入った皿を並べてくつろいでいた。
最初の頃は散策するだけだったのだが、やがて本を持ってきてベンチで読むようになり、そのうちバスケットに食べ物や飲み物を入れて持ってきて、本格的にくつろぐようになった。
ときには、お茶のあとでウトウトとうたた寝をすることもあるが、そういうときには目を覚ますとカップの類はすっかりバスケットに片付けられていて、あとは帰るだけに整えられているのが常だった。
ギムナジウムの図書館で借りた本を閉じると、主はテーブルに顔を伏せて目を閉じた。その静かな理性をたたえた眼が閉ざされると、幼さが残る顔が年相応にあどけなく見える。
テーブルの上の小皿には、小さな焼き菓子が一つだけ残っていて、カップには一口分のお茶が入ったままだった。
いつも通りカップと皿を片付けようと、主を起こさぬように静かに近づいた庭守りは、しばし考えてから、皿に手を伸ばした。
心地よい風に目を覚ました主は、綺麗に片付けられたバスケットを見て微笑んだ。
「(もう少し慣れたら、カップを2つ持ってこようか)」
下唇を軽く親指で撫でて逡巡した主は、いや、このままのほうが良いか、と深い笑みを浮かべて庭を立ち去った。
***************************
お読みいただきありがとうございます。感想、レビュー☆、応援などいただけますと大変励みになります。
主人公の性別どころか種族すら人間かどうか本文中で確定していないお話にお付き合いいただき誠にありがとうございました。
庭守りと主のこの先の幸せと、庭守りの正体は、皆様のご想像におまかせします。どうぞ思う存分幸せにしてやってください。
よろしくお願いします。
庭守りと主 雲丹屋 @Uniyauriya
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます