第8話 宿敵をざまぁする


 花咲の予想通り、三時間目はAクラスと体育だった。

 しかもバスケ。向こうは特待生もいるし、バスケ部エースの刈谷だっている。

 どう考えたって噛ませ犬にする気満々だ。


 やる気のないムードのクラスメイト達。

 俺が戦うチームに入るのにそう苦労することはなかった。

 吸血鬼の力、見せてやるぜ。


 しかし体操服姿の花咲と優香は可愛い。

 優香はどうも見学に回るみたいだが、花咲は女子チームと戦うつもりのようだ。


 優香とうっかり目が合う。へらりと笑ってぷらぷらと手を振ってくれた。

 ……まぁ、あいつはああいう奴だ。


 俺を振ったことなんて一切気にしないタイプ。

 今のも知り合いがこっち見てるから手を振っとこう、みたいな気持ちだったに違いない。

 一応幼馴染だったのに……引け目ぐらい感じろよな。


「へっ、おまえかよ。ボコボコにしてやるぜ。バスケで」


 当然のごとくバスケ部エースの刈谷が相手チームだった。

 でもこちらには吸血鬼の力がある。ボコボコにされるのはそっちだ。

 そんなことを面と向かっていう度胸はない……が、実力で示すことは出来た。


 上昇した身体能力は刈谷程度はあっさり上回っていた。

 簡単にボールを奪い取り、ダンクシュートを決められたのだ。


「うぉおおおおおおおおおお!!」


 盛り上がるCクラスの生徒達。唖然とするAクラスの生徒達。

 俺だって流石にこんなに動けるとは思ってなかった。

 吸血鬼の力、様々だな。


「なんだってんだよ……!!」


 その後も相手をコケにできるレベルで何点もとることが出来た。

 一回ぐらいならまぐれで済んだだろうが、俺も調子に乗っていた。

 けっきょく30点差をつけ、試合は終わった。


「バスケでボコボコにするんじゃなかったのか? うん?」

「くっ……!!」


 睨んでくる刈谷。自分の得意技で見下してた相手に負けるのはさぞ不愉快だろう。

 試合が終わると、Cクラスの生徒たちがこっちに駆け寄ってきた。


「流石だぜ、相澤!」

「いつのまにあんなに鍛えたんだ!?」

「バスケ部に入れよ、おまえ!!」

「いや偶然だよ、偶然」


 一応謙遜しておく俺。

 まぁどこから見ても偶然では片付かない身体能力だったが……。


「いや~~相馬は出来るやつなんじゃないかと思ってたよ、私」


 花咲が寄ってきて、ガッツリ抱きついてきた。

 大きい胸が背中に当たる。お、おい良いのか!?


「次は女子だね、私も負けてらんないなぁ、これは!!」

「ああ、頑張ってくれ」


 流石に女子チームにバスケ部の特待生はいない。

 一応、運動ならなんでも出来る花咲がいる分、こっちが有利か……?


 おお、花咲のやつシュートを決めやがった。

 これなら勝てるかもな。


 チラリと優香を見る。

 なにやら刈谷と話していて、バチンッと刈谷の頬を叩いていた。


 あいつ面子とかかなり気にするタイプだからな……。

 バスケ部のエースである刈谷が負けたのが許せなかったのだろう。

 へへへ、なんかざまぁみろって感じだな。


 ただバスケで負けただけで不仲になるなんて、大した仲じゃないのさ。

 結局、女子チームも俺らCクラスが勝つことが出来た。


 しばらく学内ででかい顔ができるぞ、これは。


 女子が勝ったあと、再び花咲が汗まみれで抱きついてきたのは言うまでもない。

 あ!! なんかフローラルな匂いする!!

 感極まってのことだろうけど、ダメだろ!! 女の子として!!


 

 

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