第7話 一日ぶりの登校


 翌日、正直言って大して眠れなかった。

 湯上がりの美少女が隣で眠っているかと思うと、年頃の男子には厳しい!1

 なんかすっげぇいい匂いするし!!


 しかし体は全然大丈夫。これが吸血鬼の力ってやつかぁ……。

 さて、朝食と朝支度を済ませ、今日は学校に行ける準備をした。

 一応アルシュカのために弁当もこさえておいて……っと。


 朝食はトーストとハム、そして目玉焼きだ。

 それにカップスープ。まぁ定番だろう。


「うむ、くるしゅうない」


 なんて偉そぶってアルシュカが返事する。

 朝が弱いようでパジャマ姿にすらなりたくないようだ。


 服を生成し続けるのもちょっと疲れるのだろう。

 結局、下着姿になったから俺のシャツを着せておいた。

 

 パジャマぐらいは買わないとダメならこれ……。


「じゃあ弁当、冷蔵庫に入れておいたし」

「え、どこ行くんだい?」

「学校に決まってるだろ。おまえは家にいとけよ」

「ふぅん……」


 学生服に着替え終わったし、鞄を持って登校。

 風呂場の前に脱衣所があってよかったと思う。

 一人暮らしのときは無駄スペースだと思ったけど。


 さて、俺の通う高校──須原坂学園はまぁまぁの私立校である。成績が悪い生徒でもスポーツが出来れば入学させる特待生制度もあるため、けっこう不良が多かったりする。


 でもまぁ、私立でもそこそこ勉強できれば安いので助かっている。

 ていうか成績で学費を変動させるな。嫌な学校だな。俺の場合、最悪Dクラスになったら学費が厳しいから退学させるなんて言われている。今はCクラス。

 点数にはまだ余裕があるが、バイトも始めるとなれば頑張らないとな。


 ちなみに優香はAクラスだった。

 クラスが離れてしまったのも、俺が寝取られた原因と言えるだろう……。

 悲しいことである。


 そんなCクラスに入ると、すぐさま声をかけてくる女子生徒がいた。


「やっほー! あんた優香に振られたんだって? 聞いたよー!」


 燃えるような赤髪をショートカットにしたこの巨乳の女は花咲天歌。

 誰に対してもヘラヘラと声を掛ける陽キャラを体現したような女だ。

 隣の席に座っている俺にもこうして気さくに声をかけてくる。


 まぁ、今となっては嬉しいな、うん。

 優香が寝取られる前はちょっとうっとおしかったけど。


「振られたっていうか寝取られたっていうか……」

「寝てから言え、寝てから」

「いや俺ら幼稚園の頃から結婚の約束してたし!?」

「キショいよ~~!」


 はははは、と高笑いする花咲。

 俺としては半ば本気なのだが……。

 どっこいしょ、と席に座る。


「まぁ、その様子なら大して気にしてなさそうだね」

「いや一日寝込んだわ」

「昨日休んでたもんね~。ノートとっといたよん」

「センキュー」


 そう言って花咲がノートのコピーを渡してくれた。

 この程度なら問題なく追いつけそうだ。

 後で俺のノートに貼っつけておくか。


「わからないことがあれば聞きなよ~」

「いや大丈夫。本当助かる。ありがとう」

「お互い様! 私が休んだときは逆に頼むよ~」

「もちろんだ」


 俺に頼まなくても頼れそうな友達がごまんといそうだが……。

 こいつにはもう日頃から世話になってるしな。


「そういえば今日、体育あるじゃん? Aクラスと合同だってさ」

「はぁ? Aクラス特待生も多いはずだろ」

「うん、練習試合とか噛ませじゃん、うちら。噛ませだよ」


 ていうか優香と顔合わせそうなのが気が重い、うん。

 つーか優香の彼氏ともだよ。刈谷紘汰ァ……。


 けど、今の俺には吸血鬼の力がある。

 何の練習試合かわからないが、もしかしたら一矢報いれるかも……。


「ふん、まぁいい。俺に任せておけ」

「ウケる。頼りにしてるからね~~」

「おお、何時間目だっけ?」

「三時間目だね」

「了解」


 まぁ、別に何時間目だっていいんだが。

 学生の会話ってのはそんな無駄な会話の応酬だ。

 それに着替えるタイミングもあるからな。聞いとかないと。


 さて、一時間目は……数学か。

 頑張るとしよう!!

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