第2話 ターニングポイント
森へ入ったはいいものの、食料はないし、寝床ないし水もない。
いたかもしれない親に、いや程言われてきたのは水のこと。
水がないと人ってすぐ死んでしまうんだよ。ってね。
だから水を探すことにした。
10分ぐらい歩いた。
おぼつかない足で、よちよち歩いてんのに絡みつく根に勝手に苛つきながら
うまく動けない自分に嫌気がする。
でも進まないと死ぬ。
でもうまく進めない。
進むんだ。一歩ずつでも。
どれくらい歩いたんだろうか。
地面が見えないくらい意識が朦朧としている。
「み…ず…」
声が出ない。
愚痴も言えない。
愚痴を言うわけにもいかない。
進まなきゃ。
そう思って重くなりすぎた足を一歩動かそうと踏み出したそこには
ツルがひょっこりと出ているではないか。
「あだっ」
こけた。これ絶対こけた。
視界がスローモーションのように遅く感じる。
あぁ。これが走馬灯か。
そうして眠気に身を任せようとしたとき、
体からごそっと何かが減っていった。
お腹の中の力が減ったのか。
そう思った。
でも、私を迎えたのはフカフカな毛だった。
ただ温かい。それだけでも、嬉しかった。
助かるなら、何でもする。
「み…ず…を…くだ…さい……」
それを言い終えれたと思うと、私の意識は暗黒へと沈んでいった。
私を起こしたのはただ冷たいものだった。
ザバッっと音がすると、服が冷たいものでびしょびしょになった。
ピチャピチャ音もなっている。
薄っすらと目を開けると、
白銀の毛をした狼がこちらに来ているではないか。
「わわあわゎあわわ!」
びっくりして変な声が出てしまった。
狼さんは声にビクッとするけど、ゆっくり高貴な佇まいでこちらへ近づいてくる。
私は腰が抜けてしまって、ただ後ずさることしかできない。
【あーーー、えと、はじめ、まし、て?ご主、人?】
頭に声が響いた。
「ふぎにゃっ!」
また声が出ちゃった。
ってか、ご、ご主人!?
「ひ、ひとちがいじゃない、です、か?」
【いやー…私、あなたに召喚されたんですよー?】
召喚!?なぬ!?
「召喚って…?」
【一応、私、「
伝説って言われてたときもあったんですけどね?
なんか、召喚されたんですよ。あなたに。】
嘘だぁ!私、伝説の魔獣的なの召喚したってこと!?
嘘だぁーー!
【召喚も知らないとなると、魔法も知らないのかも…エルフなのに。】
え?魔法?まほう?あるの?
「まほう!教えて!」
【えっ…あー…もう、召喚されて逃げれないし…教えてあげるよ。】
やった。まほう。がんばる。
【えっと、じゃあ、魔法を使うためには、基礎魔力がどれくらいあるかと、属性変化、状態変化の2つの魔力制御、使う魔法のランクを学ばないといけないの】
へー結構多いな。
「ふむふむ」
【君の基礎魔力はねー…ほぼ無限ぐらい。実質的な数値はわからないけど、私を召喚しても、ほぼ減ってない。】
無限ぐらいって。
やったね。
「それってすごいの?」
【うーんと、正直化け物。私を呼ぶのに、クラス4以上の魔法使いが8人ちょいいないと呼べないくらい魔力使うのに、ほぼ減ってない。】
わーい。
「クラスって?」
【人間の中の魔法使いの評価みたいなやつだよ】
へー
【今から、魔力制御を鍛えよう。魔力制御と、基礎魔力さえあれば、ほぼすべてのランクの魔法が使えるよ。私よりも基礎魔力が多いから。】
へー…
ん?伝説の魔獣的なのより基礎魔力が多い…?
「私よりも基礎魔力が多いから。」
……なんか、世界が面倒なことになりそう。
考えないようにしよ。
【だってー、魔物がよってきてないしー。魔力がちょっとずつ漏れてきてるからー
魔物からしたら怖いんだよー】
ふーん。通りで襲われなかったわけだ。
あっそういえば。
「魔力制御ってこんな感じ?」
体の満腹感みたいなのをこねくり回して槍みたいにしてぶっ飛ばしてみた。
爆音とともにへし折れて吹っ飛ぶ木々。
【わぁ……。】
ぽかんと空いた狼さんの顔。
「わーぁい。できたぁ!」
【えーっとぉ…私…いります?】
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