第23話 彩
彩は、ショートで来た子だった。
両親が離婚調停中で、父が出張や離婚の準備をするために彩を預けることになった。
彩の母親は外国籍の人で、父は日本人…
彩は、クリクリ目の可愛い女の子だった。
施設では、こんな風に短い期間だけ預かることもある。
本来は、低学年のホームで預かるのがいいのだが
この時は、空いてる部屋がなく…
高学年のホームに来ることになった。
その子が来るとは、聞いていたが
当日、私は休みだったから、他の職員が対応した。
翌日、ホームに行って
引継ぎを聞いていると…
昨夜、彩がおねしょをして
夜中に、職員の部屋に来たと聞いた…
それから、彩は毎日おねしょをした。
ホームの子たちは、最初は
「可愛いー」
と言って、彩を可愛がった…
髪を結んであげたり、すごい可愛がりようだった。
でも、彩が出来ないことが多いから…
だんだん、イライラするようになった。
おもちゃで遊んだり、本を読んだりしても片付けない。
ご飯を食べるのも遅かったり…
ルールも、なかなか覚えなくて…
みんな、毎日イラついて
「あの子、いつまでいるの?」
と聞いてきた。
そのうち、彩はホームで1人でいることが多くなった。
私は、少しずつ彩に注意をして…
彩が出来るようになったことを、紙に書いて部屋の壁に貼った。
片付けが出来るようになった…
洗濯物を、部屋に持っていく…等
出来ることが10個になるまで、頑張ってみようと声掛けをして…
出来ることが増えると、彩を褒める…
そうすると、彩はすごく嬉しそうにした。
彩は、少しずつ自信を持つようになった。
学校でも、頑張って…
低学年のホームの中に友達が出来た。
ホームでも、大きな子達をなだめて…
大目に見てやってと頼んだ。
自分から、グランドに出ていい時間を聞いてきて
グランドに出て、遊ぶようになった。
そんな時、児相から連絡があった。
彩の母親が、施設にいることを知ったらしく…
探しに来るかもしれないから、注意して欲しいと…
その日は、彩に理由をつけて外に出さないようにした。
時々、外を見ていると…
彩の母らしき…
大柄の女性が、施設の周りを歩いているのが見えた。
その日はグランドに出られず…
彩は、可愛そうだったけど…
彩を見つけられて…無理やり連れて行かれても困る。
職員間で連絡を取りながら…
見回りもして貰った…
夕方には、母の姿は見えなくなったけど…
親が探しに来るとかは、よくあることだ。
彩は、お母さんの話はしたがらなかった。
お母さんのことを聞いたら…
「お母さんは怖い」
彩は、そう言った。
それから、少しして
父の準備が整ったと連絡が入って…
彩は、帰っていった。
出来ることが10個になる前に帰っていったけど…
施設でのことが、彩の役に立っていたらいいな…
その後、彩の話は聞いていないし…
それから、施設に来ることもなかった…
どうか、彩が父と幸せに暮らせていますように…
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