第12話 環
環は、母の虐待で
2歳上の兄と一緒に施設に来た。
環は、特定の子に固執して距離が近かったり…
施設のルールを守らなかったりして
先輩に目をつけられていたり…
男子とも、距離が近くて問題を起こしたり…
それを羨ましがるこから恨まれてしまう…そんな子だった。
いつも強がっていたけど…
本当は、すごく誰かに愛されたかった子だった。
最初は、母に強い嫌悪感を示していたけど…
それには、訳があった。
母は厳しい人だったらしいけど…
母が付き合っていた男の人からの虐待もあったらしく…
雪が降る中…裸足で外に出されたこともあると…
「私は、母さんが大っ嫌い!殺してやりたい…」
と言っていた環…
環に絵を描かせると…
すごく怖い絵を描く。
滑車に首を吊らされて死んでいく人々を上から見ている人…
そんな状況の絵を描いていた…
環は、男子との距離も近いから…
勘違いをされて…好きになられることが度々あった。
施設では、男女交際を禁止している。
告白してもダメ!
環の部屋の、ゴミ箱から大量のラブレターが出て来たこともあった。
環は、男子と一緒に夜中に施設の屋根に脱走したこともあった。
「女子といるより男子といる方が楽…」
そう言ってるけど…男子は友達と思っていないことばかり…
環の母は、子ども達にしてしまったことを後悔していた。
週に1回の電話は許されていたが…
それ以外にも、心配して電話をしてくることもあった。
しかも、電話が長い…
私は、母と年齢が近いというのもあって…
話しているうちに、母に信頼されるようになった。
環も、最初は母からの電話を嫌がっていたけど…
本当にシンドイ時には、母と電話をしては泣いていた。
そのうちに、環は…
母と電話を代わる瞬間に、いい笑顔を見せるようになった。
それを、環に言うと
「え?そうかな?」
と照れていた。
それからは、施設でシンドイことが起こると…
環は母に相談するようになった。
電話の時に、一度だけ…
内容を聞かないようにして欲しいと頼まれたことがあった。
電話の内容は聞いていて、日誌に書かなければいけないんだけど…
私は、それを聞き入れた…
その後で、母に電話を代わると…
「誰にも言わないで欲しい…先生を信用して話します…」
と環が話した内容を教えてくれた。
環は、ある男の子にキスをされたそうだ…
それで、ショックで落ち込んでいたと…
環は、その男の子のことを好きだと思っていたけど
キスされたことが、すごく嫌だったと…
私は、その話を自分の中で収めた。
それから、母との外出が許され…
楽しそうに外出をしていた。
その後、児相が家庭訪問をして帰省の許可も出た。
そのうち、環は「家に戻りたい」と言い始め…
しばらくして…
突然、学校に行きたくない。帰省したいと言った。
児相に相談したら、帰省してもいいと許可が出た。
母と児相が、話し合い…
環は、そのまま母の元に戻ることになって施設を退所した。
でも、もうすぐ受験だったから
中学校は、そのまま通って…
行きたいと言っていた私立の高校に合格した。
環と母が、兄を迎えに来た時に…
初めて母と、顔を合わした…
母とは、何回も電話をしていた…
母も、いつも紬先生が次に来るのはいつですか?
と聞いてくれて…
児童養護施設では、保護者のケアの大事さを知った。
兄は、施設に残ったけど…
昨年、高校を卒業したはず…
環と兄が、どうなったのかは分からない…
でも、環と母が仲良く生活しているように
祈るしか…
私には、出来ない…
環が、母からの愛を受けられていますように…
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