第6話 金髪ドS嬢、異世界に爆誕。

「…!、…まぁ!、…しゃさまぁ!」

何やら声が聞こえる。


「勇者様ぁ!勇者様ぁ!」


目を覚ました奈月は、自分が台座の上にいることに気づく。

周りを見渡すと、100人ほどの人間が取り囲み、何やら興奮気味に叫んでいる。


(何ここ…村…?)


奈月の視線が辺りを彷徨う中、一人の老人が声を張り上げた。


「勇者様の転生に成功したぞ!!」


「勇者様の転生に祝福を!」

「これで我々も救われる!」

「勇者様ぁ!勇者様ぁ!」


村人たちの声は次第に大きくなり、轟音となって鼓膜を劈く。


「うるせぇ!!!テメェら黙れ!!!」


奈月が大声を張り上げると、その場の喧騒が一瞬で凍りついた。


「…」


村人たちは一様に沈黙し、驚愕の表情を浮かべている。


「勇者様…よね?びっくりした。」

「なんて言葉遣いだ…」


村人たちがヒソヒソと囁き始める中、奈月はその様子を一蹴し、声を上げる。


「おい、そこのジジイ、これは何だ?どこにいるんだアタシは。」


「ジ、ジジイ…?」


「さっさと答えろ。」


老人は一瞬固まったが、気を取り直して深呼吸をする。


「こ、コホン。初めまして。勇者様が転生されたこちらの村は“マゾ村”と申しまして、私はこの村の村長、シキと申します。」


「マゾ村…?キモい名前。てか転生とか勇者とかってどういうこと?説明してくれる?あと、アタシは勇者じゃなくてナツキっていうの。ちゃんと名前で呼んで。」


シキは奈月の横暴な態度にたじろぎながらも、丁寧に説明を始める。


「は、はい。ナツキ様が転生されたこの世界は、人間、モンスター、魔族が共存する世界でして…」


(ああ、異世界転生ってやつね。本当にあるんだ…。)


奈月は早々に状況を察し始める。


「古代より、人間と魔族は対立関係にありました。ですが、今から約100年前、当時の勇者様が魔王を討伐したことで平和が訪れました。しかし、最近新たな魔王が誕生し、再び侵略を始めたのです。そこで、100年に一度しか使えない転生術で、勇者様をお呼びした次第です。」


「なるほどね、状況はわかったよ。」


奈月は軽く肩をすくめると、シキに冷たく言い放つ。


「で、アタシにどうしろって?」


「どうか、魔王を討ち取っていただきたいのです!」


「やだ。面倒臭い。」


その言葉に、シキと村人たちは一瞬で凍りついた。


「ど、どうしてですか!?我々がこのまま滅亡してしまっても…!?」


「知らないよ、勝手に滅亡すれば良いじゃん。」


「そ、そんな…あんまりです…」


一気に絶望ムードに包まれる村人たち。奈月は彼らの反応を見て、冷たくしすぎたことに気づく。


「魔王ってのはそんなにやばいの?どんなやつなのよ。」


シキは慌てて人相書きを取り出す。


「奈月様と同じく人間界からの転生者なのですが、強大な力を持っており、我々では太刀打ちできません。この人相書きがその者の姿です。」


奈月はそれを受け取り、ちらりと目を通す。


「どれどれ…って、似顔絵にしてはうますぎだろ…ん?」


その瞬間、奈月の目が見開かれる。


(こいつ…アタシをあの夜刺し殺したクソガキ…?)



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