勇者の軌跡8 剣の成長とスライム鎧

その後、道中で武器を手にすることがあっても呪いの剣がその武器を破壊、吸収してしまい、新しい武器を手に入れることができなかった。

その代わりに呪いの剣は強化されていく。

徐々に硬く鋭くなっていくことで現状、戦えているがその分、自分に降りかかる呪いも強くなる。

剣が欲しがるのは他人だけの血では足らず、持ち手である自分の血も欲しがり、柄部分が変化していく。

外からみれば、拳を防御するヒルトに見えるものが形成されたのだが、その内側には細かい針がびっしりとついており、拳を固定するかのように突き刺さるとそこから血を吸われる。

吸血にダメージと共に剣自体の血を求める呪いも体に入り込むために体に常時、疲労が蓄積していく。

このままではまずいと思いつつもそれを防ぐ手立てを思いつくことがなく、なるべく人里から離れていく。


そんな中で出会ったのがダンジョンの奥底に鎮座していた動く鎧。

これまでも同じような武具に憑依したような魔物に遭遇したことはあったが、目の前の鎧は見ただけで違うとわかるほどの強さを感じる。

その鎧には幾重の傷がついてはいるが、かけることもなく、ところどころには返り討ちにしたと思われる血がこびりつき、変色していた。

性能の上がった呪いの剣でも表面を削るほどにしか傷つけることができず、相手の技量も高い。

死闘の末、核となっていた魔石に一撃を叩き込み、なんとか戦闘に勝利する。

剣の長期使用もあり、その場で気絶。

気絶したのは体感では短い時間だと思ったのだが、気づいたときには自分の体が何かに覆われているのがわかった。

手を確認するとそれは先ほどまで戦っていた鎧のように見える。

剣の次は鎧に呪われたのかと絶望したのだが鎧感触は悪くなく、体を柔らかく包み、心地いい。

多少、魔力を吸っているようではあるが魔法を使うよりは消費は少ない。

そして、手にある剣からの棘を完全に通さないため、疲労感もない。

案外いい鎧かもしれない。

後は脱ぐことができれば、問題はないかも?

そんなことを思っていると鎧に変化が起きる。

鎧がボコボコと泡立つと粘性のある物質へと変化、体から剥がれていく。

剥がれたものは剣を持つ腕、背中の二つに分かれ、腕には豪華な装飾のついた手甲、背中には体を覆い尽くすほどのマントとなった。

鎧と思っていたが、これは特殊スライム?

そうなると取り込まれる危険性があるのだが、マントに擬態したスライムはその先端を自分の顔に近づけてくる。

なぜだかその思考を読むことができて、『これでいい?』と聞いてきているのだと思った。

剣に比べると随分と可愛らしいと思い、礼を言うと喜びの感情が流れ込んでくる。

防具としてはこちらの意識した通りに鎧を展開してくれるようで、剣と違い、可愛がれる。

その代わり、体から離れようとしないのが難点。

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