第9話、クンレン
”ネコジャラシ”の飛行訓練は続く。
今日の訓練は、可変翼の開く角度を変えての
可変翼が、”
「くっ、このおお」
クルックがたまに失敗させて、海面に堕ち、盛大な水の柱を上げた。
「ふふ」
たいへんだ
イオリは、力なく笑う。
クルックが、カナード翼の片方を
「ちょっと、大丈夫~」
ファラクがイオリに声をかける。
「可変翼が”全開”に出来ないときは、前部小型ジェットを使った
メルル―テが、評価試験用のファイルに書き込んだ。
◆
次に行われたのが、海上での垂直離発着訓練である。
これも同じように、翼が開いた状態と閉じた状態で行われた。
シュパアアアア
「こっちはまだ楽だなっ」
クルックが、危なげなく”ネコジャラシ”を海面近くでホバリングさせている。
「確かにな」
イオリが”ネコジャラシ”を空中でピタリと停止させた。
その場で横に180度、クルリと回す。
ある程度二人が慣れてきた。
「じゃあ、そこで可変翼の角度を変えてみて~」
メルル―テの声が無線から聞こえてくる。
「えっ」
「えっ」
左手はスロットル、右手は操縦桿を
可変翼の角度を変えるには、どちらかの手を離してハンドルを回さなければならない。
「うっそおおお」
ドッパアアアン
クルック機が派手に水柱を上げる。
「くっ、このっ」
流石のイオリもフラフラになった。
二人が、操縦桿を太ももで挟むことに気がつくまで、クルックが三度水柱を上げた。
◆
約二週間、どんな状況下でも、離着水できるようになるまで訓練は続いた。
「そろそろかな~」
安定して離着水出来るようになってきた。
メルル―テは、飛行艇空母”キサラギ”を、”シラフル湖”の真ん中に浮かべた。
「それでは、空母”キサラギ”への離発着訓練を行います~」
「これまで以上に慎重に行うように~」
”キサラギ”の飛行甲板には、前と後ろに白で、円とHが描かれていた。
その印を目指して、垂直で離発着するのである。
円の外に二個、収納用のエレベーターがあった。
前と後ろ、同時に二機、離発着が出来る。
「失敗は許されない」
クルックも慎重に訓練を行った。
二人が、危なげなく離発着、出来るようになるまで、二週間かかった。
◆
”シラフル湖”の上空に”キサラギ”が浮いている。
「最終訓練だ~」
「これから、飛行中の空母に離発着してもらう~」
「「了解」」
訓練を初めて、二人ともかれこれ一カ月くらい経っていた。
「イオリ機、離艦を許可する~」
後部飛行甲板だ。
「こちらイオリ、離艦する」
ハンドルを回して、可変翼を全開に開いた。
後部メインジェットのベクターノズルは、最大まで下を向いている。
前部小型ジェットの噴射口を開いた。
”ネコジャラシ”の
シュパアア
イオリがゆっくりとスロットルを上げていく。
「”ネコジャラシ”、テイク、オフ」
ふわりと、機体が浮かび上がった。
「クルック機も離艦を許可」
「了解っ」
同じように、前部飛行甲板から、クルック機が舞い上がった。
二機、同時離艦が出来るようになっていた。
しばらく、艦の上にホバリングした後、
ドオオオオオン
二機が左右に分かれて加速。
加速にともなって、可変翼が閉じられていった。
二機が、左右反対周りで『シラフル湖』の湖岸をクルリと回る。
「「着艦許可を求む」」
同じタイミングで帰ってきた。
可変翼が開かれていく。
「クルック機は、後部へ」
「イオリ機は、前部甲板へ、着艦せよ」
可変翼を全開にし、”ネコジャラシ”を
白いHの文字めがけて降下させた。
「着艦」
ふうううう
イオリは息を吐いた。
クルクルとハンドルを回し、可変翼を全閉にしていく。
空母の格納庫に収納されるからだ。
移動用の車輪のついた下駄をフロート部にはかされ、エレベーターに移動される。
格納庫のハンガーに収納された。
「お帰り~」
ファラクが出迎えてくれる。
「ただいま」
イオリはオープンコックピットから下りた。
機体の整備をするつもりだ。
ファラクは頭の後ろに手を組んで、黙ってイオリを見ていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます