タグ通りの西洋ファンタジーで、泣ける作品です。
ときどきくすりと笑えます。じっくりと、そして繰り返し読みたくなるような作品です。
左目に罪人の証である刺青(いれずみ)を持つ少年ハオは、村人たちから腫れ物のように接されている。
そんな彼によりそった三人称視点での筆致が素晴らしいのです。それはハオの心情を映してか、概ね淡々としてドライなのですが、ときに口悪く、ときに激しく発露し、読む者の心を震わせます。
また、秋から冬へと移り変わる風景が五感に伝わってきます。こういうところが好きです。
どうかどうかこの作品に二重の意味での春が来て欲しい、そう強く思います。
国境近くの辺境の村。
火事で焼け落ちた教会。
焼け焦げた司祭の遺体。
普通なら派遣されるはずのない二人の審問官
……と、徐々に真相が見えてくるミステリー仕立てが良いのです。
「ああ、あのときの会話や描写は、こういう意味だったのか」という読書体験に慣れた方、好きな方に特にお薦めします。
一応、主人公はハオくん(のはず)ですが、審問官二人のバディもの、あるいは登場人物たちの群像劇として読むこともできます。構成の妙と言えるでしょう。
キャラクターがそれぞれに魅力的なのです。
どうか本作を見つけてください! 縦組みで読むことを推奨します。