物語のベースは竹取物語
ですがこのお話の舞台はかぐや姫に魅いられた帝が座す宮中
そして主役は皇后『桔梗』
月の使者を遠ざけんと私情から近衛府を動かさんとする帝により渾沌とする宮中にて
皇后を始めとした内裏に関わる女性たちが、それぞれの想い思惑を胸に動き始めます
どの人物も良いも悪いも非常に人間味があり、とても楽しんで読めます
イチオシはやはり主役の桔梗
境遇からくる諦観を抱えつつも、自立した一人の女性として混乱の最中にある宮中をも超えて戦う様は、ほれぼれとしてしまいます
宮中物として一風変わった作風でありながら、非常にしっかりと作り込まれており、アイデア頼りにもなっていない
繊細で歯切れの良い描写に引き込まれる、素晴らしい作品です
視点の切り替わりもエピソードタイトルでキッチリ伝えに来ているのも好感触
最後にこれは余計かもですが、タイトルで読者に伝わる情報がないことだけが気になります
作者さんさえ良ければ、後ろにサブタイトルがあると多くの人に知ってもらえるかと思います
皆様是非お読みくださいませ!
『竹取物語』由来の幻想的な要素を巧みに取り入れた歴史ファンタジー。月から来たかぐや姫と、彼女に心を奪われた帝の関係を軸に、竹取物語では描かれなかった人々の視点から紡がれる新たなドラマ。美しいかぐや姫の存在が宮廷内に波紋を広げる中で、皇后、中宮、梨壺という三人の女性が物語を動かしていきます。
本作には平安時代特有の宮廷文化や価値観が色濃く反映されており、和歌や香りを通じたコミュニケーションや貴族社会ならではの礼儀作法が細かく描写されています。また宮中の人間関係や権力闘争がリアルに描かれているため、当時の宮廷生活に触れるような感覚を味わえます。
またこの物語には複数の恋愛が絡み合います。異なる形で描かれるそれぞれの恋愛模様は宮中の人間関係の複雑さをより際立たせ、権力闘争や社会的地位とも結びついて、物語全体に緊張感と深みを与えます。
この物語に登場する三人のヒロインに共通するのは、時代に翻弄されない強い意志。
皇后は冷静で知的なリーダーとして宮廷内で奮闘します。物語内で彼女は非常に苦しい立場に置かれますが、権力に頼らず己自身で立ち向かう姿は読み手の胸を打ちます。その冷静さと責任感とはうらはらに、彼女が抱える孤独や葛藤、内面的な弱さに人間味を感じます。
中宮は若さゆえの純粋さと正義感を持つ少女。皇后を尊敬しつつも自分自身の役割について悩みます。まだ若い彼女の成長過程には希望があり、応援したくなります。自分なりに正義を貫こうとする姿勢がとても印象的で、そのひたむきさは物語全体に爽やかな風を吹き込んでいます。
梨壺は情熱的で芯の強い性格を持つ女性。帝への愛情と他の女性への嫉妬心から複雑な感情を抱えますが、それでもなお立ち向かおうとする姿勢には力強さを感じます。ライバルである皇后や中宮と協力して行動する柔軟性も見せます。その強かさには切実さと共感できる部分があります。
誰もが知る日本最古の物語『竹取物語』という古典作品へのオマージュでありながら、新しい視点と現代的なテーマを取り入れた独自性あふれる作品。幻想的な要素と現実的な人間模様が絡み合うドラマティックな展開が非常に魅力的です。『竹取物語』を知る全ての人に読んでいただきたい作品です。