第19話

『あら?待っていてくれたの?ありがとう。』


「お嬢様の考えていることなんて大体分かりますから。」


笑顔で話す執事のユルリッシュ。ユルリッシュはお父様にいつもついている執事の息子で基本的には私についている。歳も近く話しやすいのは良いのだけれど、彼の性格はあまりよろしくない。私限定で。

丁寧な物言いの中に、少し私をからかう表現をしてくるのだ。今も、その笑顔の裏が怖いくらい。


『アレス様こちらへ。』


執事を横目にアレス様を座る場所へと促す。


「あぁ。」


「アレス王子殿下、こちらの椅子へどうぞ。」


ユルリッシュはアレス様が座る椅子を引く。しかし、アレス様はそこに座ることなく反対側の方に行った。


「メリア嬢、お先にお座りください。」


アレス様はわざわざ私の座る椅子を引いたのだ。まさかの行動に、驚いてしまう

今までそのようなことはされなかったのに。


『あ、ありがとうございます。』


アレス様の優しさを無下にすることは出来ないので素直に座る。アレス様は私を座らせたあとユルリッシュがいる椅子へと腰を下ろした。ユルリッシュはアレス様が座ったのを確認すると、お茶を用意し始める。


「お嬢様はいつものでよろしいですか?」


『ええ、いいわ。』


「かしこまりました。アレス王子殿下はいかが致しましょう?紅茶や珈琲なども揃えていますが。」


「メリア嬢と同じもので構わない。」


「承知しました。それでは用意してまいりますので、ごゆっくりなさってください。」


ユルリッシュは一礼すると、お茶を用意するためその場から離れて行った。


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