第15話

「それでメリア嬢、何をする予定だったのだ?私を差し置いて。」


差し置いてって表現が悪いですわ。私が悪者に聞こえてしまう。


『私はこれから、お庭に行って本を読もうかと思っておりましたわ。だからこうして、本を』


私はアレス様に持っていた本を見せる。


「ほう。アレス嬢は本がお好きで?」


『えぇ。昔から好きですよ。アレス様はお知りになられてはなかったと思いますが、』


アレス様の前で本なんてもの読んだことは無い。本を読んでいたら、演技の時の印象とかけ離れ過ぎてしまって違和感を持たせてしまう可能性があったから基本的には家でしか本を読んでこなかった。

特に、私は庭で本を読むのがお気に入り。お母様が生前とても大切にしていたと聞かされていたから。


でも、私はアレス様の好きなものは何でも知っている、と思う。演技の為って言うのもあったけれど、それよりも単純に気になったから毎日のアレス様の表情の変化などを見て好きな物を知っていった。


「ならこれから知っていこうか。君の好きな物、好きな事、好きな場所、君の好きなもの全てのものを。」


私の本を持っていない方の手を取り、アレス様の口元に持っていき軽くキスを落とす。

途端に恥ずかしくなった私は、すぐに手を引き両手で本を抱え両手を守る。


そんな反応を見たアレス様は軽く笑っている。


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