時計の針は嘘をつかない
―― 1時間後 ――
「うおおおおおぉぉぉぉぉっ!」
「はい、ゴール」
俺の漕ぐ自転車が、アスファルト上に引かれた白線を超えたところで、唯愛がストップウォッチを止める。
「これで予定の検証回数はクリアだね。お疲れ様、竜司」
「ゼェェェーーー……ッ! ゼェッ、ゼェー……ッ!」
自転車に跨ったまま、ハンドルにもたれかかるようにして、荒い息を整える。
調査の第一歩として俺たちが着手したのは、現場検証だった。
【野球部】側が主張する須田のアリバイは、専用グラウンドの三塁側出口から事故現場までを16:30~16:32の間に移動することは不可能、という理屈の上で成り立っている。
この部分が揺らいでしまっては、元も子もない。
そこで、ひとまず実際に自転車を漕いで、当時の状況を再現してみることにしたのだが……。
「ハァ……ッ、ハァッ……オェッ!」
まさか、20往復もさせられるとは思ってなかった。
そりゃ、信ぴょう性のあるデータを取るには、ある程度の試行回数は必要なんだろうけどさぁ。
ほとんど休みなしに全力疾走し続けるのは、流石にキツいもんがあるぞ。
足はパンパンで、胸も締め付けられる様に痛い。……やっぱ運動不足なんかなぁ。
野球部から借りた備品の自転車も、ただでさえ整備不良だったところに急に負荷をかけられたせいで、キィキィと悲鳴を上げている。
「で、どうだった?」
手帳にタイムを記録している唯愛に、検証結果を尋ねる。
「どうやら、高城さんの言い分は正しかったみたいだね」
「だろうな。流石に条件が厳しすぎる」
三塁側出口を出てから、自転車を漕ぐためにスパイクを運動靴に履き替え。
グラウンドの外周を半周して、一塁側の駐輪スペースに移動。
そこから自転車に乗ってこの事故現場まで走って来るとなると、どんだけ気張っても3~4分はかかっちまう。
「ともかく、これで須田のアリバイは成立だな」
「そうだね。16:30の時点で三塁側にいるのが確定している以上、事故のあった時間にここまで辿り着くのは、まず無理だと思う」
「となると、須田は本当に無罪だったのか。それとも目撃情報が間違ってたのか……」
「その判断をするにも、調査が必要だよ。……うん、ちょうどいいタイミングだね」
スマホをチェックした唯愛が呟く。
「誰からだ?」
「二階堂会長。執行部が事故の目撃者に事情聴取をしてるから、話が聞きたければ訪ねてみろって」
つま先を本校舎へ向ける。
「容疑者と目撃者。推理を始めるのは、双方の証言が揃ってからだね」
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